第11章 State
「そうだよね、サトシはまだここに来て日が浅いから、知らないよね?」
別に知ったからと言って、何になる訳でもないが、アイツらの過去が無性に気になる。
「う〜ん、そうだなぁ…ジュンのことはあんまりオレ詳しくは知らないんだよね?」
マサキが困った様子で頭を掻く。
「でも、カズとは元々知り合いだったみたいだけどね?」
松本と二宮が?
「偶然だったみたいだけどね?」
当然だろう。
受刑者は刑務所を選べないんだから…
子供が親を選べないのと同じでな…。
「二宮は…?」
「カズはねぇ、詐欺罪だったかな? アイツ口は上手いし、手先も器用じゃん?」
詐欺師か…
「アイツらしいな…」
余りにも“らしい”罪名に、俺はクスリと笑ってしまう。
「あっ、そうだ!」
マサキが何かを思い出したように、手を叩いた。
「ジュンの奴さ、ここ来た当初もかなり無茶やってた、って噂聞いたことあって…。でも、ここで知り合った人…何つったかな?」
マサキが胸の前で腕を組んで考え込む。
そして暫くして、漸く顔を上げたマサキは、俺の顔を見てニカッと笑って見せた。
「思い出せねぇや。 あっ、でもその人今は“なんとか鉄工所”の社長さんらしいんだけどね? たまにここにも面会にも来るらしいけど」
“鉄工所”?
“ムショ帰りの社長”?
もしも俺の知ってるやってだとしたら?
無数に絡まった糸が、少しづつ解れ、
漸く一本だけ繋がった。
『State』完