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サファイアと大泥棒と毒を盛った皿と日誌。

第6章 高潔の人。




「首輪、みたいだな。」
「そうですね。実際にお付けになられるのでしたら、やはり指輪かペンダントトップの様に加工するのがよろしいかと。」

首輪!
チョーカーとは女性の首の細さを強調する素晴らしいものだ!
それを、首輪と!
どうせ、このサファイアの価値も分かっていないのだろう?
こいつは世界に一粒だけ。
ディープシーブルーサファイアと呼ばれる代物だぞ?
知っているか?青年。

「いや。良いサファイアだ。これにする。いくらだ。」
「え?えぇと、に、2万5千2百3十ポンドになりますが…。」
「25,230ポンドだな。それでいい。」

か、買う?!

「え!?は、はい!ぶ、ぶ、分割で?」
「小切手でいいか?」
「は。は。は!はい!ただいま!」

小切手!?と言うと、手元に現金は無いが、預けにそれだけの金があると?!
貴族?
この青年は金持ち?
まさか、この私がお客様を見誤るとは。

「あぁ。あと、簡単に包装してくれ。」
「ガ、ガラスケースなどもお付け出来ますが?」
「いらない。小箱でいい。リボンをかけて。」
「はい。かしこまりました!で、では白い小箱に、紺色のリボンは如何でしょう?」
「あぁ。それがいいな。」

言葉に訛りが無いから、ここの人だと分かるが。
しかし、はじめてお見かけした青年だ。
青年を見送ってから私は、少々落胆する。
あの青年は二度とこの店には来ないだろうと、何処かで感じたからだ。




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