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サファイアと大泥棒と毒を盛った皿と日誌。

第7章 心の成長の人。




部屋に戻ると、ベッドの上で眠りこけている奴がいた。
昨日は随分忙しかったようだ。
眠るならきちんとベッドに潜り込んで寝ろというのに、だらしない。

注意してやろうと頭の方へ回り込むと、顔の前には無防備にサファイアが投げ出されていた。
きっとこいつは、寝転びながらこのサファイアを眺めていたのだろう。
そのうちに眠ってしまったという、非常に間抜けな事に違いない。

で。
今もまだ眠りこけている奴のサファイアを少し拝借した。

盗もうなど思っている訳ではない。
こいつの物は俺の物同然だから、そんなことする必要はない。

気になっただけだ。
俺は宝石に縁のある生活などした事が無いから。
まじまじと見つめれば、吸いこまれそうな青。
確かに美しいとは思うが。
これがどれほどの価値になるのか俺には分からない。

なぜ、こいつは似合わないサファイアなんか持ってるんだ。
いや、失礼な発言だったか?
元は貴族だ。
時々忘れる。

奔放に泥に塗れて馬をしつけ。
誰とでも明るく笑って話し。
最近は誰の所為か、立体起動装置の使い方まで覚えて、俺の暇な時に教えて下さいとまで言いだした。
そんな事を許すわけが無い。

ただ、体術訓練に時折見学に行っているようで、若い兵士らが騒いでいた。
筋があるだの、さすがは兵長の彼女だの。
俺は一度も教えた事はねぇ。
あいつの才能だろう。
あぁも細いくせして、運動神経だけは良い。

昔からちょこまかと動き回るおてんばな子供だったに違いない。

しかし、本当に綺麗なサファイアだ。

俺はそっとサファイアを彼女の掌に戻す。

本当は、砕いて粉にしてやりてぇよ。
でも、そうしないでくれ。と、このサファイアが言ったような気がした。

なんだ。お前も一緒か?
気になるよな。
これから先の未来が。





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