第31章 灰羽リエーフの数日 2023
寒さ深まる10月中旬。
俺はお風呂あがりでほかほかになっている美優さんを後ろから抱きしめ問うた。
「俺、そろそろ誕生日じゃないですか。何かしたいこととかありますか。」
今年は休み取りますよ。そう伝えるが美優さんは微妙な顔。
「ハロウィン前後は稼ぎ時なんでしょ。だったら平日のお互いのお休みにお出かけ、当日にリエーフの好きなご飯っていうのはどう。」
美優さんは背中に張り付いた俺の腕を掴みながらぺたぺたと歩きはじめ、ソファの前に立つとくるりと半回転し俺にソファに座るように促す。
俺が座ったのを確認すると美優さんは俺の足の間に座った。
「リエーフだってお仕事でやれること増えてきてるんだし、リエーフを指名してくれるお客さんもいるんでしょ。だったらお客さんがたくさん来る時にチャンス逃すのは勿体ないよ。」
顔をこちらに向け微笑む美優さん。これは否定は認めないやつだ。ダメ押しで、ね?なんて首を傾げられたらノックアウト。そうですねしか言えなくなった。
不満げな表情だったのだろう。ほかり、とした美優さんの手が頬を包む。
「出来るだけ当日お祝いしてきたもんね。やっぱり寂しい?」
寂しくないと言ったら嘘になる。
でも…
「他の日にもお祝いできますもんね。」
俺は美優さんの手に自分の掌を重ね笑った。