第28章 いつまでも輝く君でいて〜if〜
食事も終わり、リエーフの準備も終了。
マネージャーさんからの連絡もまだ来ないから、束の間のゆっくりタイム。
「そうだ、美優さん。これ。」
リエーフの足の間で体を抱かれたまま渡されたのは綺麗な封筒。
首を傾げ開いてみれば、旬のモデルが活躍する若い子向けのファッションショーのチケット。日本でモデルとして名が知れていないと呼ばれないってリエーフが前に言っていた。そのステージのチケットと控室へのパスが入ったIDケースが入っているのを見ると思わずリエーフに抱きついた。
『…行って、いいの?』
震える声を押し殺し、問いかける。
リエーフの大きい手が私の背中を優しく撫でた。
「美優さんに見てほしい。美優さんが見てくれなきゃ嫌だ。」
こっち見て。
下を向く私の頬に手を添えられ上を向かされると、溜まっていた涙が頬を伝った。
嬉しい。
嬉しい。
1つ、2つと溢れた涙がどんどん溢れ出して、大好きなリエーフの顔が見えない。
『いく。絶対行くっ、から。』
とめどなく溢れる涙をリエーフが拭いてくれる。
「いっぱい寂しい思いさせてるし、俺にはこれくらいしかできないから。」
眉尻を下げて笑うリエーフ。リエーフの方が忙しいし、人を気遣う余裕なんて絶対ない。それでもいつでも私のことを考えてくれるリエーフがやっぱり大好きで、思わず強く抱きしめた。
しかし、無情にも鳴る着信音。リエーフはスマホの画面を見ると悲しい顔をする。
「行かなきゃ。」
『ん。』
鞄を持ち玄関に向かうリエーフの背中を見つめる。
行ってほしくない。その言葉を飲み込み行ってきますと振り返るリエーフの唇に口付ける。
『今日もごはん作っておくね?リクエストは?』
悲しい顔が少しだけ晴れる。ドアを開けたリエーフは、大好物の名前を伝え、仕事に向かっていった。