第25章 そうだ、旅行に行こう。〜2019.8/18〜8/19〜
『恥ずかしかった…』
薄暗くなってきた外を眺めながらぽつりと呟けば、ハンドルを握っていたリエーフがくくっと笑う。
「あの後買い物中も言われましたもんね。」
たくさんの人が見ていたお城前でのプロポーズ。
リエーフが高身長で銀髪と目立つ容姿をしているため、様々なところで知らない人たちからお祝いの言葉をもらった。
はあ、とため息をついた私にリエーフはくすりと笑いながら私に問う。
「でも、嬉しいでしょう?」
『知らない。』
不意と窓の外を見る。
明るかった空は少しずつ青みを増している。
適当に流したプレイリストがあまりスピードの出なくなった車内に流れている。
今年有名になった、女性シンガーの花の名前の曲が流れる。
少し低めの落ち着いた声が歌い上げるラブソング。
1番が終わり2番。
渋滞で止まった車の中、リエーフの名前を呼ぶ。
"愛してるの言葉じゃ足りないから口付けて"
その歌詞が流れるタイミングで自ら唇にキスをする。
『私はね、贅沢だから言葉だけじゃ足りない。
キスだけでも足りない。
だから、たくさん伝えて欲しいしたくさん触れて欲しい。
いっぱい大好きだって伝えて欲しい。』
「前は恥ずかしいって言ってたのに…
美優さん変わりましたね。」
ゆっくり、ゆっくり進み始めた車。
肘置きにわざと置いた右手の上にリエーフが自分の左手を重ねる。
薬指にはキラリと光る指輪がはめられていた。
『リエーフと会って8年だよ?変わらないわけないじゃない。』
安心を知って、温もりを知った。
満たされることを知ってわがままを知った。
愛することを知って幸せを知った。
たくさんたくさん、リエーフに教えてもらった。
『愛してる、リエーフ。』
これからはたくさんもらったものを貴方に返していくね?
end