第25章 そうだ、旅行に行こう。〜2019.8/18〜8/19〜
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店頭での書類の説明は終わったが、車に乗ってみると久々なこともあって勝手がわからない。
それを察した店員さんが丁寧に教えてくれるけれど、頭がパニックになっていて余計に体がガチガチに…
「お姉さん、大丈夫?」
『だいっ、じょうぶだと、思いますっ!』
口ではそう言いながら内心半泣き。
おっかなびっくりハンドルを握っていれば、知った声が聞こえほっと息を吐く。
「遅くなりました。美優さん大丈夫?」
『…だめ。』
変わりますと私の代わりに運転席に乗ったリエーフは一通り説明を受けるとするすると運転を始めた。
さすが、飲み込みが早い…
「じゃあこのまま運転して行きますね?ありがとうございます。」
いつのまにかリエーフは運転席を自分の乗りやすい位置に変え、私が助手席に座るのを待っている。
私は反対側に回り助手席に座りシートベルトを締めた。
「じゃあ行きますよ?」
にかり笑ったリエーフは店員さんに会釈し、そのまま道路に向かう。
「うまいでしょ、俺。」
『うん。』
「惚れ直した?」
信号で車が止まる。
こちらを覗き見るリエーフにいつもと違う色気。
思わずそっぽを向き可愛くないことを言ってしまう。
『リエーフ、しょっちゅうクロの車に乗せてもらってるじゃない。』
「そうですけどー!」
そんな話をしていればすぐに着く我が家。
バックモニターを見ず直接後ろを見ながら、リエーフは一発で駐車を決める。
その仕草を盗み見ながら格好よさに赤面してしまったのをバレないようにとそっぽを向いていればリエーフが私に声をかけた。
『何?リエ…』
不意に近づいた顔。
唇にふわりとした感触とくすりと笑い声。
「美優さん顔真っ赤。可愛い。」
『っ!』
降りますよなんて言われたけれどしばらく惚けてしまい、慌てて車から降りるとリエーフが笑う。
「先に店行っててもらってありがとうございます。部屋行きましょう?」
はいと差し出された手。
反射的に手を握れば温かくて少し荒れたリエーフの手が私の手を握る。
『家を出る目標は30分だよ?』
「はーい。で、美優さん。」
俺、格好良かった?
くん、と手を引かれリエーフと目が合う。
碧玉の瞳でまっすぐ見つめられると、どうにも嘘がつけない。
茹で蛸のような顔でこくりと頷けばリエーフは満足そうに笑った。