第22章 椎名美優の数日後 in2018
…なんて考えていたのだけれど、結局指輪を渡すタイミングは見当たらず。
だからといって新しいプレゼントを決めて送ることもできない。
どうしようと悩んでいたリエーフの誕生日から1週間目の夜。
仕事から帰宅したリエーフがぽそりと呟いた。
「美優さん、違うんだったらいいんですが…
最近ため息がちなのって…俺へのプレゼントのことだったり…
いやいいです!!」
私がなかなか答えないことを否定ととったのか、リエーフは私が答えを言う前に荷物を置きに部屋へと戻ってしまう。
言わなきゃ
言ってもいいのだろうか。
心にもやもやを抱えたまま移動したキッチン。
私の頭の中みたいにぐちゃぐちゃと、目の前のシチューを混ぜていると、後ろからふわりと腕が伸びてきた。
「美優さん。」
かちり、止まるコンロ。
反対を向き、リエーフのふわふわのニットに顔を埋めれば、ぽつり、ぽつりとリエーフが言葉を落とす。
「美優さんが今悩んでる理由、教えて欲しいです。
俺が協力出来ること、少しでもやってあげたいです。」
きゅっと抱きしめられ、少しだけ気持ちが落ち着く。
それと同時にぐちゃぐちゃだった気持ちが固まった。
『リエーフ、目、瞑ってて?』
私は決心するとリエーフから少しだけ離れ、ポケットから箱を取り出すと、中身を取り出しリエーフの左手の薬指にはめた。
『…約束の……』
全部言う前に再び抱きしめられる体。
抱きしめ…
あれ?
と思う間に私の体はふわり宙に浮き、作業台の上に腰掛けられる。
「俺、美優さんのそばにずっと居ていいんですよね。」
掴まれた肩
真剣な瞳
少しだけ震える声
怖い、んだ。
きっと。
GOサインを受け取ったリエーフに、私はそっと言葉を紡ぐ。
『リエーフじゃないと、駄目。
もう、リエーフがいないと生きていけない。
私と、結婚、してくれますか?』
2つの翠から溢れる雫。
言葉にならないのか、首をこくこくと縦に降る。
「おれっ…まだ…ゆびわ…
クリスマスに…用意…つもりで…」
止まらない涙でうまく言葉が紡げないリエーフの頭を胸元に引き寄せて抱きしめる。
出会った頃より長くなった襟足。
引き締まった表情。
出会って7年。
長くて短い日々を2人で過ごした。
もう、あなたなしではいられない。
ずっと私のそばにいて