第15章 2人(?)ドタバタクリスマス!中編!
リエーフがトイレに行く後ろ姿を目で追っていると、ポケットのスマホが震えだした。
画面を見ればマサちゃんからの電話。
合宿の時学校に忘れ物でもしたかな…
気になって電話を取れば、マサちゃんの声。
『もしもし、マサちゃん?どうしたの?』
「あ、美優。お前さ、今どこにいる?」
何故、マサちゃんに居場所を伝えなきゃならないのだろうか。
疑問に思いながら場所を伝える。
『サンシャインシティだけど…何で?』
「さて、何でだと思う?」
そう問われたとき、何故か感じる違和感。
電話の声がぶれるように聞こえたのだ。
まさか
そう思った時、目の前にダークモカのサイドゴアブーツが立つ。
顔をあげれば、ベージュのチノパン、ネイビーのショールカーディガンに白シャツ。
そして無精髭とワックスで整えた髪。
黒縁メガネから覗く瞳は、マサちゃんのものだった。
「お前を偶然見つけたからだ。美優。」
その声は電話と目の前、どちらからも聞こえる。
マサちゃんの登場に動揺していると、くいと腕を引かれ、そのままトイレとは反対方向へと歩きだした。
『ね、マサちゃん⁈私リエーフと』
「ああ、知ってる。だからだよ。」
人通りの少ない角を曲がった瞬間、私の方を振り向いたマサちゃん。
私の進路を阻むように腕を伸ばすマサちゃんから逃げようとしたけれど背後には壁、前にはマサちゃん。
いわゆる壁ドン状態で逃げることもできない。
「逃がさねえぞ。」
ふわり、香るバニラが心を不安にさせる。
いつもの香りじゃないことが、こんなにも気持ちを焦らせる。
『リエーフに電話…心配、してる…』
そう言って取り出したスマホ。
着信履歴の1番上。
リエーフの名前をタップする。
数回のコール音で聞こえたリエーフの声。
「もしもし、美優さん?俺さっきのところに戻って来たけど…」
『あ…リエーフっ』
どうしよう、マサちゃんから逃げられない。
そう言おうとしたけれど、それを口にする前に私のスマホは手の中から消えた。
「なあ、灰羽。
ゲーム、しようか。」
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