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おそ松さん〜ニート達の恋模様〜

第4章 ひとりぼっちヒーロー 一松


トイレに行ったついでに十四松兄さんが電話を取ったみたいだ。


下から声が聞こえてくる。



十「もしもし、十四松です!そうでーす!松野でーす!はい、一松兄さん?いまーす!はい、はい!」



声が途切れ、階段をバタバタと走る音が近づく。



十「一松兄さん、でんわー!」


一「…あぁ」




ロングスリーパーから解放されたカラ松兄さんが、畳に倒れこみ涙目になっている。



のそのそと階段を降りていく一松兄さんを、ボクらはそっと覗き込んだ。



お「なぁ、十四松。電話って誰から?」


十「うんとねー、女の子」


お、カ、チ、ト「え?」



僕らは耳に全神経を集中させ、電話を盗み聴きする。


だけど…



ト「…ダメだね。ボソボソ話すから全然聞こえない」


お「…まさかアイツ、性犯罪でもやらかして住所特定されたとか!?」


チ「それだったら警察が直接来るでしょ。あっ、戻ってきた!」



僕らは何食わぬ顔で所定の位置に戻った。



ガラッ



襖が開く。



一「……出かけてくる」



そう言うと、一松兄さんは普段あまり着ないジャケットに着替え出す。



チ「今から?一人で?」


一「……主と」


お「なんだ、猫かー!だはははっ!!」


一「……」



ピンポーン



耳に入るは、滅多に鳴らない玄関のチャイム。



一「チッ…迎えに行くっつったのに…」



一松兄さんはそう言うと、少し早足で部屋から出て行く。



ガラガラ…ガタンッ



玄関の引き戸が閉まった音を合図に、ボクらは無言で窓を開け道路を覗き込む。



ボクらの目に飛び込んできた光景は…



ト「十四松兄さん」


十「なーにー?」


ト「電話の女の子の名前って…?」


十「えーっとねー、なんとか主!!」


お、カ、チ、ト(えぇぇぇえーーーっ!!!!)



猫ではなく人間の主と、仲睦まじく歩く一松兄さん。



その目撃者であるボクたちの…



行くあてのない魂の叫びは、



青空の彼方に消えて行った…。













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