第10章 デート編 一松くんのドキドキデート日和
「一松くーん、早くー!」
「待って…」
こっちはニートだから体力無いし、暑いの苦手で倒れそうなのに、なんでそんなに元気なんだか。
鳥居が見えると、主は途端にはしゃぎ出し、のそのそ歩くおれの腕を掴み早足になった。
今日は炎天下の中、招き猫発祥の猫神社にまでやって来た。
鳥居の前には、招き猫の絵の下に「沖○総司終端の地」と書かれた立て看板がある。
本当かどうかはよく分かんないけど、観光客が食いつくこと間違いなし。
案の定、おれの彼女は目が釘付け。
(彼女…か)
そういえば、ちゃんと「付き合って」とかロクな告白してないけど、おれ達ってホントに付き合ってんのか?
この間、チ、チューとかしちゃったけど…。
もしかしたら、主にとってチューは握手より砕けた感じの挨拶なだけかも。
一人で彼氏気取ってるだけで、おれなんて、主にとってただの知り合いAかもしれない。
「ここって、招き猫の他に沖○総司まで関連があるんだねー!すごーい!」
「……はいはい」
「ほら、鳥居くぐろう。一礼してから端っこを通るんだよ。真ん中は神様の通り道だから」
「……へぇ」
そんな決まりあったのか。
きっと、今日のために調べまくったんだろうな。
コイツって凝り性なとこあるし。
ペコリと軽く会釈して、大きな鳥居の端を二人でくぐる。
境内に入ると、五月蝿いセミに出迎えられた。