第3章 人攫い
「……まだ怒ってる?」
「いや。」
アリスが根城にしているホテル。
そのベッドに太宰と並んで横になっているのだが。
「………いっぱい謝ったのに?」
「だから、あの件はもう怒ってはいないよ。少し考え事をね。」
「……。」
嘘は言っていない。
浮かない顔をしている太宰にピタリと引っ付いてみる事にしたアリス。
すると直ぐに腕を回してくる。
「考え事?」
「今日、いや、もう昨日になるけれど。」
「うん。」
「子供達の中の1人が誘拐された路地裏を調べに行ったのだがね。何故か男が3人、狂っていて―……」
ギクリッ
「……何でアリスが反応するのかな?」
「いや!反応なんて!治兄、疲れてるよ!早く寝ましょ!?」
「へえ…。」
「!」
納得していない返事と共に、アリスの手首をガッチリ掴んで拘束し、覆い被さる。
その目は正に、獲物を見付けた猛獣だ――。
「まだ足りなかった様だね?気付かなくて申し訳ない。少し過ぎてしまったが、アリスにとって特別な日だったもんねえ……。」
黒い笑顔を浮かべて一気に云い放つ。
「イヤイヤイヤ!如何に治兄に愛されてるか、もう充分に分かりましたから!待って!ね!?ちゃんと話す!話しますからもう許しっ……!」
今更、素直になっても遅いよ。
そう耳元で囁くとアリスの首すじに顔を埋めた――。