第13章 買い物
「ふぁ~~。」
「……眠れた?アリスちゃん。」
欠伸をして目をあけたアリスに、鏡花と与謝野が話し掛ける。
「うーん。まだ一寸眠たいや……もう少し寝ようかなぁ」
目を擦りながらそう云うと与謝野の肩に寄り掛かる。
「……矢鱈眠そうだけど大丈夫なンだろうね?」
「大丈夫だよー。昨日、治兄とお話ししてて夜更かししちゃっただけだから。」
心配そうに訊ねる与謝野にケラケラと笑いながら答えると再び目を閉じる。
「にしてもよくこンな状況で眠れるねェ。」
与謝野の呟きに対してアリスからの返事は、ない。
こんな状況とは、手には手錠が、足には足枷がはめられている状況。
完全に誰かに拘束されているのだ。
「鏡花は大丈夫かい?」
「うん。二人が居るから平気。でも……。」
コクリと頷いて返事すると、鏡花は周りを見渡す。
すすり泣く声が其処ら中から聞こえ、その声の主たちの顔は暗い。
鏡花達の他に20人近くの女性が同様に拘束されているのだ。
「コレが最近起きている連続女性誘拐事件の被害者みたいだね。全く。」
「如何しますか?夜叉白雪なら多分……。」
「イヤ。相手の素性も、数も、目的も判らない状況で下手に動くもんじゃあないよ。夜叉白雪でも勝てない相手だったら如何すンだい?暫く様子見だよ。」
「分かりました。」
「全く。買い物に出ただけだッたってンのについてないねえ。」
事は数時間前に遡る――。
皆で話していた正午過ぎ。
嵐の到着を乱歩が預言し、一目散に散る男性陣。
「「?」」
「買い出しに行きたいんだけど誰か荷持ち――」
「あ、晶姉か」
「…買い物。」
ガチャリと音をたてて開いた扉から現れた白衣を纏った女性の姿を見て、男性陣が姿を消した理由を理解するアリスと鏡花。
「晶姉ー。私もお買い物に行きたいー。」
「私も。」
「じゃあ3人で行くとするかねェ。支度しな。」
「「はーい。」」
こうして3人は買い物に出掛けた。
そう。
そこまでは良かったのだ。