第11章 変化
「国木田ー。僕の上だけ暗いんだけど。」
「え?あ、蛍光灯が切れてますね。予備は……」
乱歩に蛍光灯が切れていることを指摘されて予備の備品を置くスペースを漁る国木田。
「な……予備が無いだと!?莫迦な!あと一つあると、手帳に記して有るのに!」
「備品の数量まで管理してあるんですね…その手帳。」
国木田が衝撃を受け、うちひしがれているのを見ながら敦が苦笑する。
そのタイミングで、谷崎が事務室内に入ってくる。
「「あ。」」
「ン?」
敦と鏡花が谷崎を。
正確には谷崎の手に有るものをみて短く声を上げる。
入ってきた瞬間に注目を浴びた谷崎は首を傾げた。
その手に持つのは一本の蛍光灯。
少し埃被った古いものだ。
「谷崎、お前か!蛍光灯を持ち出したのは!」
突然怒鳴られて、飛び上がる谷崎。
「ええェ!?あ、はい!社長室の天井灯が切れてるッて社長が出掛け間際に云われたもンですから!」
「何!?社長室だと!?それならば仕方あるまい。」
国木田にすごい剣幕で詰め寄られ、慌てて自分の言い分を話す谷崎。
しかし、「社長室」と云う単語を聞いた途端に国木田があっさりと静まったので谷崎は状況が全く分からないものの安堵の息を漏らした。
「ねえー国木田ーまだー?」
「済みません、乱歩さん。予備を切らしてしまったようなので今から買ってきます。」
乱歩に謝罪し、遣いを頼もうと敦の方を向く。
「私が行ってきます。」
「ん?場所分かるか?」
国木田が敦に話しかける前に鏡花が立候補する。
場所を訊ねると鏡花が短く「あっ」と声を漏らす。
「じゃあ僕も一緒に――」
「私が行くよ。」
敦の声を遮るように女性の、否、少女の声が被さる。
その声がした方向、探偵社の入り口を見ると声の主が、社員ではない2人を伴って立っていた。
「アリスちゃん。……あれ、」
「おや、箕浦くんじゃないか!」
敦が2人に話し掛けようとしたところ、乱歩が先に行動に出る。
「何故、アリスと一緒に?」
「偶々、其処で会っただけだよ。依頼なんだって。さ、鏡花ちゃん。行こう?」
国木田の質問に簡潔に答えて鏡花と共に去ろうとするアリス。
鏡花がトコトコとアリスの方へ向かう。