第10章 予期せぬ再会
「何時の間に此処に。」
自分が普段居る部屋に設けてある来客用のソファーに丸くなって眠っている少女を見て呟く福沢。
「………。」
小学校を卒業した位の年齢層にしか見えない少女なのだが。福沢はふぅと息を吐き、眠っている少女――アリスの頭を撫でる。
「んっ…。」
「起こしたか……済まない。」
アリスはゆっくりと起き上がり、ふあぁーと欠伸を1つして、隣に腰かけている福沢を見る。
「おはよー社長。」
「もう正午だ。」
「あー。一寸寝過ごしたかな?」
ニコッと笑って話すアリス。
「何時の間に此処に居た?」
「ん?何か『この案件は乱歩に行かせるか…』って難しい顔しながら書類と睨めっこしてる時からかな?」
「……そんなに前からか。」
「気付かなかったでしょ?」
「ああ。」
アリスの言った行動をとったのは出勤して直ぐ…午前8時頃の出来事だった。
そんなに前から、こんなに近くにいながら全く気付かないとは。
福沢が自分の警戒心の衰えを心配しているとアリスが話し掛ける。
「今は探偵社の皆が私を認識出来ないようにしてるから。社長が幾ら警戒しててもどうにもなってないよ。」
「!」
心を読まれたのか。
いや、そんなことよりもだ。
「…辛いか?陽の当たる場所で生きることは。」
「…。」
福沢の問いに少し俯くアリス。
福沢は黙って、アリスが話すのを待っている。
「辛くは無いよ……でも疲れちゃったかな。」
「そうか。」
「今みたいに私の事を忘れてくれてたら何も考えずにいられると思ったんだけどね。」
「深く関わるからこそお互いが理解し、生まれるものも得るものも在るのだ。」
「…うん。」
「何かあったのか?」
「特に。ただ…善悪の区別が判らないから困ってる。」
「……。」
「否、判ってはいるんだけど……私にとっては大したことじゃないから平気で悪いことしちゃったり……。」
「そうか。」
福沢がぽんぽんと頭を撫でると、ポフッと福沢の膝に頭を乗っけるアリス。
「……きっと居ない方がいい。」
「此処から去ることは認めん。」
福沢はキッパリと云い切る。