第9章 パラサイト
「あの当時の軍警はね、『放置しよう』って結論を出して、パラサイトを見逃していたんだ。争いに巻き込まれるかもしれない一般市民よりも優先したいことがあったんだよ。」
「…成程。」
「あの…済みません。説明をお願いします。」
太宰だけがアリスの発言の内容に納得している。
敦は話に付いていけずに、汗を流しながら太宰に説明を求めた。
「恐らく、マフィア達が勝手に自滅していくのを恰かも自分達の功績により為し得た……つまり自分達の手柄にしていたのだよ。」
「!」
アリスの言葉に、太宰が解答する。
矢張り国木田は声も出ずにいた。
「そう。目先の利益に眼が眩んでて、目的が自分達の組織だって気付かなかった。」
此処で疑問を持った敦が口を挟んだ。
「でもその逃走犯は死刑が確定していたんでしょ?ってことは警察が捕まえたんじゃ…」
「そうだよ。私が腹癒せに色々な罪の情報を警察じゃなく表の…マスコミにバラ撒いて牢屋に追い込んだんだ。警察よりよっぽど優秀だよ。」
「……腹癒せ?」
知りたかった逮捕の事よりも不穏な単語が出てきた事の方に反応する敦。
「だって………酷い目にあったんだもん。」
プイッと外方向くアリス。
敦は疑問符を頭全体に浮かべているが太宰が「へぇ。」と云いながらアリスの頭を撫でる。
「どんな目にあったんだい?」
「!」
ビクッとするアリスを太宰がニヤリとしながら見ている。
「………言わないもん。」
「真逆、あの男にキス以外のこともされていた訳じゃないだろうね?」
「あるわけないでしょ!っていうか治兄、あの場に出てこなかっただけで本当はずっと居て、事の一部始終を観てたんでしょ!?」
「おや、気付いてなかったのかい?」
「矢っ張りそうだったんだ!出てきてくれてたらあんなことにはならなかったのに!」
「前にも言ったけど、最初から私に頼らなかった罰だよ。」
「!」
「今日も怒っているからね。知ってると思うけど。」
「うぅ……。」
言葉に詰まり、ポフッと太宰に抱き着くアリス。