第7章 陽の当たる場所
「◇◇ちゃーん!◇◇ちゃん何処ー?!」
アリスは買い物から帰る途中、必死に誰かの名前を呼ぶ女性を見掛ける。
珠には違う道を通ってみようと散歩がてら通っている現在地は閑静な住宅街のど真ん中。
「住宅街で迷子とか有り得るかな…。」
女性の行動に疑問を抱きながら眺める。
この辺の住宅街は裕福層が住んでおり、最近は物騒なため監視カメラも彼方此方に設置されている。
誰にも見られずに誘拐は難しい筈。
母親らしき其の女性は必死だ。
無理もない。
世間では10日間で6人の行方不明者を出していた。
然も、全て横浜市近辺、この界隈だ。
アリスは放っておこうと一度は見ぬ振りをしたが、
「………。」
女性の必死さに何かを思い、近付いて声を掛けた。
「あのー。迷子さんですか?」
「!」
声を掛けられてビクッとした女性。
警戒したようだがアリスの姿を見るや否や、必死だったことを思い出したように説明を始めた。
「そうなんです!うちの子が公園に遊びに行くと言ったっきり帰らなくて!」
女性の目には涙が浮かんでいた。
「よければ一緒に捜しますよ。特徴とか教えて下さい。」
ニッコリ笑って手伝いを申し出るアリスに少し安堵の息を漏らす女性。
「有難うございます!◇◇と云う名前で、特徴は…あ、此れが写真です。」
「!写真が在るんですね。」
胸元に提げていたロケットの中に3人で写る写真が納められていた。
男性は父親か。皆、満面な笑みで写っている。
幸せそう………。
「一寸、借りれます?」
「あ、はい。」
そういってロケットをアリスに渡す母親。
写真が在るなら早い
『ワンダーランド』を発動し、効果範囲内の防犯カメラの映像と照合する。
「?」
貸したロケットの写真を見る訳でもないアリスの行動に疑問符を浮かべる母親。
暫くして目を開けたアリスは直ぐにロケットを返却する。
「公園は彼方で間違いないですか?」
「はい。そうです。」
「もう一度行ってみましょう。」
「あ……はい。」
ニッコリ笑って告げたアリスに同意し、2人で公園のある方へ歩き出した。