第6章 事件現場
―――
武装探偵社の医務室のベッド。
其処で眠っている少女を呆然と見ている男が1人。
太宰だ。
「そんなに見つめたって目覚めやしないよ。」
「与謝野女医…。」
何時の間にか太宰の後ろに立っていたのは与謝野と国木田。
其のことにすら気付かない程、太宰も疲弊していた。
「一寸休みな。此の子は妾が診ててあげるよ。」
「…。」
動こうとしない太宰を、与謝野が目配せして国木田に運ばせる。
多少抵抗したが、太宰は其のまま医務室から連れ出された。
国木田が大きな声で太宰に何か云っているのを遠耳で聴きながら溜め息を着く。
「にしても、5日も飲まず食わずで眠り続けるなんざ何処の眠り姫だい…」
そう言いながら少女の頬に触れようとした瞬間
バチッ
「?!」
静電気の様なものが走り、慌てて手を引っ込める。
「何だッてンだい?!全く…!」
手を押さえて呻いていたところに。
「誰?」
「!?」
眠ったままだった少女が目を覚まし、声を掛けてきた。
―――
「お前も休め!あの小娘が起きたとき、お前が元気無ければ心配するだろう!」
「心配…『大嫌い』な私をかい?」
ソファーに横になって答える太宰。
顔は見えない。
「あれは誤解だと説明すればいいだけの事だろう!」
あれやこれや、太宰を慰める言葉を並べる国木田。
「国木田さん…」
「あ?何だ?谷崎。」
「太宰さん、寝ちゃってます。」
「~~!」
誰かが頭を撫でる。
私にそんな事をする人間など、果たして探偵社に居ただろうか――然し、心地好い
「こんなに隙だらけなんて治兄も弱くなったね?」
「!」
耳に届いた声に、意識が持っていかれる。
慌てて起き上がると、目の前には驚く少女。
「アリス…」
「うわぁ!」
その姿を認識した瞬間に、挨拶もそこそこに抱き締める。
周りに居た全員がうわーと声を漏らす。
数人、顔も赤い。
「一寸、苦しいよ!」
太宰は無言のままアリスを抱き締め続ける。
ガチャリ
扉が開く。
現れたのは和服の男性。
「社長!」
社長と呼ばれた男をアリスは知っていた。
「福沢おじちゃん…」
「!」
驚く太宰。
そんなことお構いなしに、福沢はアリスの方を真っ直ぐ向いて告げた。
「時が来た。武装探偵社に入れ、アリス。」