第1章 中学時代
「も、雄英志望でしょ?」
眉を下げて笑う出久に、本当の志望理由は言えない。
勝己と出久が行くから、だなんて。
本気でヒーローを目指す彼に、そんなふざけたこと口が裂けても言えなかった。
「うん。もちろんだよ」
それを聞いてほんの少し救われたような顔をする出久に、今は黙っていよう、と決めた。
どのみちどこかは受けないといけないのだし、それが出久たちと同じ雄英だったとしても、咎められるいわれはない。出久のように、ただ目の前の事を頑張るだけだ。
用を思い出したというので、出久とは昇降口のところで別れた。いつもと変わらないように見えた、その背中を追いかけなかったことを数時間後、私は後悔することになる。