第1章 中学時代
「」
さわさわと木の葉が揺れて、微風が肌を撫でると思い出す。
「オレが、守ってやるからな」
木漏れ日に金髪をきらめかせ、赤い双眸を細めて、勝己は笑っていた。繋いだ手はもみじのように小さく、力も頼りない。それでも温かくて、私にとっては世界で一番安心できる手のひらだった。
互いの個性が発現する前の、優しい過去。あの頃の私たちは間違いなく、一等仲良しで、唯一無二の幼なじみだった。
「おい邪魔だブス。道開けろや」
それがどうしてこうなったのか。
進路を塞いでチンピラよろしく凄む爆豪勝己に、知らず知らずのうちにため息が漏れる。
名前を呼ばなくなり、たまに廊下で会えば突っかかってくる関係になったのは、もう随分と前のことだ。
「廊下は空いてるんだから、通りたいならどうぞ、好きなところを通って」
「あ?んで俺がてめーのために道譲らなきゃいけねえんだ。てめえが退けや」
「はいはい…」
小学校の高学年あたりから勝己のガキ大将気質は悪い方向へと変わり、今では立派な不良中学生である。みみっちいから内申点に響くような事はしないものの、素行の悪さに変わりはなく、もう一人の幼なじみである出久に対しては最早たちの悪いいじめっ子だった。
幼なじみという過去のためか、妙に絡んでくる勝己に大人しく道を譲れば、何が気に入らないのか舌打ちして通り過ぎる。その後をいつもの取り巻きが追いかけるのを見送ると、またため息が落ちた。
なんでこうなっちゃったんだろうな。