第6章 田中恵土:パスト(past)
恵土「みんなみんな…(うるうる)
みんな、大事な人だ!!
それと同じように、全員が大事だ!!!」
私は
殺されたみんなの分まで、生きてかなきゃいけないんだ!!
ちゃんと…
今までにされてきた、ひどいことだけじゃなく
その中にもあった
大切なものとも、向き合わなきゃいけないんだ!!
恵土「ヴィランもヒーローも…
全部、大事な人たちなんだっ!!!!
全部、繋がり合って…全部があるんだ!!
社会があるんだ!!!
お父さんは…
お母さんは、それを教えてくれた!
与えてくれた!!
これから生きる世の中を、護らなきゃいけないんだ」
その刹那、全身から白い電光がほとばしった。
黒くも、冷たくもなく
ただただ真っ白で…温かな光が……
「!!」
ヴィランが驚きと共に目を見開いた。
でも、そんなことはどうでもよかった。
それが頭に入ってこないぐらい
私の中には、ある想いでいっぱいだった。
そして私は、下ろしていた拳をあげた。
涙を流す中、震える中…
それでも、決断した。
そうして私は、両拳を握り直した。
恵土「私は…
ヒーローだから、戦うんじゃない。
お前を倒したいから、倒すんじゃない。
お父さんとお母さんが、『殺すな』って言ってる!
殺されたみんなが、だからって同じになるなって言ってる!!
だから決めた!!
私は…
お前を捕まえて、罪を償わせる!!
そして…
お前が笑ってられる未来を取り戻す!!!(涙」
両拳を握り締めて、構える中
涙が、次々に零れ落ちていった…
そっちもまた、奪われたかもしれない。
それでも…
私は、それが許せなくて動くんじゃない。
明るく笑えた未来までもが奪われた事を知ってる。
再び、それを取り戻させたかった。
一緒に笑おうって…
その未来に、繋げたかった。
私は人に、そう言ってきた。
特に、大事な人たちには…
もし、今
逆にされたらと思うと…
嬉しくてたまらない!!
それさえも奪われたことが
哀しくて、切なくて…
『救けたい』って思ったんだ。
たとえ、大切なものを『奪った人』であっても…
それを失う気持ちが、痛いほど解るから!