第6章 田中恵土:パスト(past)
恵土「確かに…
ヒーローはいいように持ち上げられて
それだけになっている所だって、多々あるよ」
俯きながら、顔を伏せながら呟いた。
ヴィランにやっと聞こえるような、小さな声で。
その周囲には、瓦礫の山が崩されていく音が響いた。
恵土「それでも…
そのヒーローがっ
そのみんな(家族)が!
隣に居てくれたから、そんな闇はどうでもいいって思えるようになった!!
皆、何かしら抱えながら…
それでも必死に生きてんだ!!
こんな歪んだ社会でも、必死に生き抜いてるんだ!!」
「その周囲の全てが敵に回っても同じことが言えるか!?」
恵土「私には
かっちゃんとデッ君と、家族が味方でいてくれた!
それ以外の全部が敵に回られた!!
ひどい目にも遭ってきたし
ひどいこと沢山言われてきた!」
「なら!!」
恵土「そうされるのが辛いってのは知ってる!!
それでも…
だからって、こんな思いをさせていいとは思えない!!!」
「!!!
なら…
俺たちを散々傷付け続けてきた奴等はヴィランじゃないととらえ
平然と、それらを見過ごすヒーローを尊べと?
それまで…
敵ばかりで、気を許せる味方など一人もいなかった!
そんなお前までもが!!
私そのものを否定するのか!!!??(くわっ!!」
そう叫ぶヴィランに、私は…
あの日の自分を重ねた。
当時、傷付けられ続けてきて…
特に、体験入園では誰にも救けてもらえなくて
両膝を抱えて、泣きじゃくってた己が…
(その心中の中…
瓦礫の山が崩れる音が止んだ)
拳をさらに強く握り締め、震えが増す中
私は、思いのたけをぶつけた。
恵土「違う。
それなら、お父さんも同じ思いしてきた。
お母さんも、同じ思いをしてきた!!
差別されて、嫌な思いを味合わされて!!
それでも、必死に生きてきたんだ!!
なのにっ…
お前はそれを人のせいにして
社会のせいにして、人を傷付けてるだけじゃないか!!
社会が悪い?ヒトが悪い?
だからって、傷付けて殺していい理由になるもんか!!!
あるはずだった幸せを、奪っていいはずがあるもんか!!!」
そんな言葉を投げかける中、私の中では
その想いと共に、ある想い出が蘇っていた……