第5章 戦闘訓練開始
そのために強くなってきたのは
前々から知っていたし、よく聴かされていた。
護るために、必死に頑張ってきたことを教えられた。
エクシードの親類は、ヴィランに殺されて死んだ。
そして、その祖父母はヒーローだった。
だからこそ、余計にそう思ったんだそうだ。
『俺の家族は、誰も死なせない。
これ以上、同じ思いをする人たちを
決して、増やさせたりはしない』
と…
『決して、怒りに飲まれるな。
いかなる時でも、平常心を忘れるな。
怒りは、刃を鈍らせる。
理不尽を生み出し、憎しみや恨みを生み出す。
心だけでなく、体にまで傷を残し
それが周囲にまた、蔓延する事にもなる。
それ以前に、この世界では
既に、跋扈(ばっこ)し続けている状態だ。
それを己自身に許せば
また、誰かが同じ思いをすることになる。
それをすれば、ヴィランと同じだと思え。
誰もが、ヴィランになりうる存在だということを肝に銘じろ。
それが、己自身や大切な人であったとしてもだ』
「わかってますよ。
『師匠』」
そしてそれを告げられた時は
もう、免許皆伝だと言われた時で…
恵土もまた、3歳の時に教わったらしい。
それを忘れないため
帰って来て、恵土と一緒に修業をする時に
また、何度でも言い聴かせるようにしているらしい。
3,4歳のガキに何してるんだと思ったが
実際に、その当時には対等に戦えていたらしい。
6歳になる前…
前に10年前と言ったが、正確には9年前だったか。
『初めて師匠って呼んでくれたな!^^』
先程までの真剣な表情から一転して
いつものように快活に笑いながら
再び、俺と向き直った。
ヒトの悪口は、言えない人だった。
恵土からもまた、聴いたことはない。
陰で、好きなように人のことを語ったりはしない。
嫌な思いをしたことを言って
そういうことを平気でできる人だと、認識付けようとしたりもしない。
そういうことができないのは、家族三人そろって同じだった。
と、同時に…
とても、珍しいものだった。