第24章 職業体験(初日)
だから、本当は解っている…
お前には…
もう既に、心に決めた人がいることも。
解ってる。
お前の目は…
心は、とっくに奪われているってことも……
(学校で
爆豪に引っ付き、話しかけまくって笑いまくる恵土が浮かぶ)
解ってるんだ…
あいつも、恵土が本当に好きだってことも…
(それを爆豪はうっとおしがりながらも、結果的には笑っていた。
とても楽しそうに笑うそれを、ずっと見てきた)
解ってる。
入る隙間も、ないことも……
それでも…俺は……
少しでも、その気持ちを
目を、俺にも向けて欲しかった。
可愛いと感じて、衝動的に唇を奪ってしまった。
それでも…
お前は…赦さないとか、それよりも
俺の気持ちを、一番重視してくれていた。
ずっと見ていたいと思えた。
それぐらい、好きだという感情に支配された。
気付けば、好きでどうしようもなくなっていた。
奪い去りたいぐらい、想っていた。
慌てふためくお前を見て、気の毒に思いながらも
それをどこか、可愛いと思ってしまう自分もいた。
………
そして今…
俺のことを想いながらか、涙ながらに断る恵土がいる。
幸せを願うなら、身を引くべき。
緑谷も、そう思って引いたんだろう。
恵土にとっては、爆豪そのものが居場所になっていたから。
それでも…
やっぱり、伝えたいと思ってしまったんだ。
ここにも、居場所があると…安心させたかった。
頼って、自分を大事にする…
そうするための相手に
爆豪だけじゃなく、俺もいるんだと解らせたかった。
その想いも、通じているだろうか…
そう思いながら見ると…
ずっと、友達でいたいと願うかのように
服の裾を、そっと握り締めてきた。
その手を、俺はそっと上から覆うように握り締めた。
温かいその手を握り締めるだけで
なぜか、幸せな気分になれた。
誰かに聞いて欲しかった想い…
言えなかった気持ち……
それを初めて、ぶつけることができた
誰よりも惚れた、相手だから―――