第15章 悪夢
でも…
それだけでも、成長していると感じられた。
動くことさえも、力になることさえも
あの時(赤い夜)、出来てなかったから…
それでも…
恵土「…」
勝己「何度だって、嫌な思いさせてもいい。
文句も言わねえし、怒らねえ!ツッコむけどな」
抱き締めながら、震えながら言う中
こいつは驚きに満ちたような表情をしていたのが見えた。
でも、それ以上に……
勝己「でもな…」
(その時、イレイザーから言われた言葉が浮かんだ。
相澤「身体を酷使したあいつの寿命は、はっきり言って皆無に近い」
体育祭を知らされた放課後の時の言葉と、廊下での静けさもまた一緒に…)
伝えたかったのは……
勝己「っ;(じわっ!」
視界が、歪んだ。
勝己「勝手に一人で突っ走って死ぬんじゃねえ!!
それだけは、死んでも守れ!!!」
ぽとっぽととっ
恵土「…かっちゃん(泣いてる」
勝己「いいか!!??
死ぬんじゃねえ!!
勝手に抱え込んでんじゃねえ!!!
少しぐれえ相談しろ!
こっちの身にもなれ!!
この…
バカ野郎がっ!!!;;」
顔を伏せながら、涙が次々に零れながら…
それでも伝えたかった。
勝己「無理、すんなよ(涙)
……
そんなにも、頼りねえのかよ」
恵土「違う。違うよ」
勝己「違わねえだろ!!
何で、一番に俺に言わなかった!!?
俺を、頼れよ!!!
人間不信になりかかったのも!社会不信になりかかったのも!!
何もかも信用できなくなったのも、もう知ってる!!!
だから…気兼ねしてんじゃねえよ。
………
俺の、最初の親友だろうが(ぽんっ」頭に手を置く
恵土「っ;;」
どんだけお前が、「自分は価値がない」と思い込んでいても
そんなお前に
心を許している人が、ここに居ることを――
大事に想っている人が、ここに居ることを……
勝己「お前ひとりだけじゃねえだろ。
お前の命も、身体も…人格も……
全部、俺の大事なもんだ(ぎゅっ!!」
夕日が差し込む中
俺は、恵土を強く抱き締めた。
『吐き出しても、いいんだ…;;』
そんな声が、ふと聞こえた。
でも、離す気はなかった。
今だけは、離したくなかったから――