第15章 悪夢
どれだけ自分が気を病んでいても
どれほど憎みそうになっていても
それに気付かぬまま、幸せそうにのんきに笑っている。
…憎らしくもあると同時に、羨ましくもあり
自分はもう、いつ死んでもいいと思わせるには十分の仕打ちだった。
周囲だけが幸せそうに笑っていて
私だけが一人、何も誰もない。
そして時が経てば、忘れられている。
平然と、そんな細かいことまで覚えているかと…
された側の苦痛も、それをおさえ殺し続ける日々も……
それらが、どれほど苦痛だったかも知らず
知らないのをいいことに、嘘呼ばわりだけし続ける。
だから…
事後報告みたいなことしか出来なかった。
何も、ない。
恵土「…」
だだだだだだだだだ!
ばぁん!!
勝己「どうした!!??」
絶叫をあげた後、すぐ駆けつけてくれる人を見て…
心を許せる、ただ一人の人に
私の心は、すぐに緩んだ。
でも、また勝手に
即座に、引き締まった。
何をしてくるかわからない。人間というのは、そういうものだ。
でも…
この人なら、信頼出来るから……
勝己「おい、恵土?」
恵土「…だいじょ……?」
ふと気が付くと、手が震えていた。
歩み寄ってくるかっちゃんに
同じ「人」なのだと、認識しているからか…
それとも…
また、同じような目に
勝己「ぎゅう)…」
かっちゃんに、優しく抱き締められた。
そこで、私の思考は一度停止した。
と同時に、かっちゃんの思考が流れ込んできた。
悪夢を見たことを、すぐに解ったこと。
悲鳴を上げるほどの苦痛だということ。
悲鳴を上げることが、今までになかったこと。
そして…
心配でたまらないということ。
その結果、かっちゃんまで少し震えていた。
その優しく抱き締める腕が
壊れ物を扱うかのように、壊れるのを恐れるようにも視えた。
恵土「っぷw
かっちゃん…
今更だけど、ごめんな(苦笑)
いっぱい…いっぱい、心配かけまくって。
あわせる顔がないっていうのかな?これ^^;」
本心だった。
ずっと、心の奥のどこかで引っかかっていた。
無理やりでも伝えようとすればできた。
でも伝えたくても、伝えられなかったから…余計に。