第15章 悪夢
生半可な気持ちや、その場の勢いなどで取った行動なら
いくらでも、止めようはある。
だが…
その時、初めてヴィランの心境が分かった。
理解されず、否定され
それでいながら、ヒーロー所か誰も動かない。
救いようのないのは、この世界だと知った。
それでも…
幸せそうに生きているのなら、家族と笑っているのなら…
それを、失わせていいはずがないとも思った。
殺したい、殺したくない(ぎゅうう!!!)
傷付けたい、殴り付けたい
ダメだ!いけない!!
感情が溢れ出ては、必死に押さえ込む。
話し相手もない、吐き出せない、相談さえもできない。
もし…
もし、生半可じゃない気持ちや
今までに積み重なってきた苦悩の果てに、行動するヴィランが居れば…
私は、それを否定できない。
むしろ、誰よりもよく解ってしまう。
勝手な都合で殺された。
誰かの勝手な気持ち一つで奪われた。
全て…
人が、行ってきたものだ。
そう、解った時…
血の涙が流れると同時に、神の力が再び溢れ出ようとしていた。
こんな世界…
もう、どうなったっていい。
何も望まない。
だから…
死なせて欲しい。
でも自殺すれば、再び同じ所まで繰り返される。
あの世のシステムも、解っていた。
だから…
もう、それごと消し去ってしまえば……
そう、何度も思ったことがあった。
悪夢を見て、人を視た瞬間に恐れて…
悲鳴を上げながら、半狂乱になりながら
抱き締めて、止めようとするイレイザーに噛み付いた。
殺さなきゃ、殺される。
幼稚園への体験入園での悲劇と同じだ。
主張の弱いものは、蹂躙され
殺されても、笑い飛ばされるだけ。
ただ、この回復能力があったから、助かっただけ。
いじめっ子たちが、強い先生にとがめられた。
いじめっ子たちは謝った、一年間いじめたことを。
決して、拭い落とせない傷を
今もなお残り続ける、声の出せない恐怖を…
一日一日の苦悩の積み重ねが、たった一つの言葉で消し去ろうとされていた。
でも…
許すしか、出来なかった。
その人たちに辛い思いを味あわせていたんじゃって思うと
許せないの一言さえも、言えなかった……