第12章 各々の胸に
今の…目の前の現実
それは、あの時とは違う。
大切な人は、一人も死んでいない。
誰もが、生きている。
殺されたわけじゃない。
ちゃんと、今を生きている。
それだけで…十分だって
解ってたはずなのに
また、自分を責めようとしていた。
そこから、助けるために…
お父さんは、話しかけに来てくれたのかな?
あの世から…
また、迷わないように。
望みながら……
そう悟った時…
なぜか、温かなものが頬を伝った。
心の中にも満たされていって…
気付けば、笑いながらも…
次々に零れ落ちる涙をぬぐおうともせず、呟いていた。
『ありがとう』
『本当に、ありがとう』
呟かれた声は、とても弱々しくて
周囲には聴き取れそうにもないほどの声…
それでも、確かに想ったんだ。
大事な、あの人たちだからこそ…
護れて、よかったって…
今度は、ちゃんと
守れたんだって――
一人じゃ、耐えられなかった。
だから、誰かが隣に居た。
イレイザーがいた。
マイクがいた。
志村さんがいた。
俊典さんがいた。
…かっちゃんが居てくれた(微笑&つー)
笑う中、涙が頬を伝う。
『ああ…
ここに居て、よかった』
そして、想ったんだ。
胸の中に、決して宿ることのなかったはずの想いが――