第12章 各々の胸に
今まで、考えもしなかった。
護れればいい。
勝てばいい。としか思わずに
疑いもしなかった。
でも、きっと…
あの時(恵土が気を失った時)、俺を見ながら笑ったのは……
安心したんだよな?
俺がいることに
無事で、隣に居ることに――
『どれだけ悪態ついてもいいから
一緒に居たいよ;かっちゃん』
隣に居れないことが、一番辛いんだって
小さい時から、いっつも言ってたもんな。
振り絞るような声で…
今にも消え入りそうな、弱々しい声で……
次、あいつに会ったら
どんな顔をすればいい?
隠していたことを、問いただすか?
それとも…
あんな敵と戦うために、距離取ってたのか?
実力も、足並みも…
今までずっと気付かせないように、合わせ続けていたことを
怒って、怒鳴りつけるか?
…
言うまでもねえ。
グダグダ考えてる暇あるなら…
今、あいつがして欲しいのは
(その時、再び浮かんできた。
みんなと共に、バスに乗り込んで席に着いた時に…)
幼恵土「私は…
かっちゃんが痛いのが、一番嫌だよっ(涙目」
はっ(微笑)
情けねえ声出しやがって…
勝己(殴りつける修業をして
掌に爪が食い込み、血を滲ませた時
怪我した時
俺が責任を感じて、涙を浮かべながら謝った時…
いつも決まって
あいつは、そう言ってきた)
幼勝己「っ;
うっ;;」
ぽたっぽたたっ
幼勝己「何が…護るだっ;
護れて…ないじゃんかっ;;
ひっく;うっ;
うああああああああああああ!!!!;」
そして…
とても辛く、痛々しい
張り裂けそうな想いと、泣き叫ぶ声が脳裏に蘇る。
あの事件の次の日
恵土がいない、恵土の家(瓦礫の山の中)での光景が……
そして今…
血が滲み出る掌を見つめながら、握り締めた。