第12章 各々の胸に
勝己(今も昔も、同じじゃねえか…(微笑))
あの時、願ったのは…
また、その笑顔と…
一緒に、笑い合いたいから――
気付けば、涙が零れ落ちていた。
隣に居て欲しい、誰かのために
負けないように、強くあろうとした。
幼かった、あの頃…
『何で知らねえの?
何で出来ねえの?
あ、そっか。
俺がすげぇんだ!
皆、俺より凄くない!』
そんな中、あいつはいつも隣に居た。
そして…
リフティングに付き合える、たった一人だった。
どんなことをやるにしても、同じ実力だった。
対等だって思ってた。
でも…
違っていた。
そっか…
今、解った気がした。
時々、感じていた。
俺が不良に捕まった時に見せた
あのオールマイトを圧倒するほどの、重圧感…
あれは、錯覚なんかじゃなかった。
あの後
いつものように笑ってたから、安心してただけで
『ああ、いつもの恵土だ』
そう思って、安堵してたけど…
実際は、あれだけの強さを隠してたんだ。
ヴィランに狙われたら、過ごせなくなるから…
だから…
あの6歳の誕生日を迎える、1週間前
森の中で遊んでいた時…
恵土が、獣と勘違いされて銃弾を撃たれそうになって
それを、俺が庇おうとした時があった。
銃弾は
俺の頭に、真っ直ぐ向かってきていた…
その一瞬…
たった一瞬、本気を出したんだ。
俺を護るために―
きっと、そうしなければ…
俺は、死んでいた。
たった一瞬、世界が視えなくなって
全部が、白い光に包まれた。
空間に、何かが満ち満ちていく感覚
きっと、それがきっかけとなって
いきなり、引っ越しなんて話になったんだろう。
何だよ…
考えれば、解る話だったじゃねえか。
勝己「一人で、無茶してんじゃねえよ。バカ(ぼそ」
俺が、発端だった。