第9章 田中恵土:オリジン
あの事件の次の日…
かっちゃんが
瓦礫の中をかき分けて見つけた写真を
今も大事に持っていることを、私は知っている。
かっちゃんの部屋で、飾られていた。
そうして…
幼い頃のように、二人で笑い合う写真のように
私たちは、笑い合った。
恵土「よ~いどん!!」
勝己「!!いきなりは卑怯だろ!」
恵土「関係な~い!^^♪」
そう、満面の笑みを浮かべながら振り返って
それを、左後ろから必死に追いかけてくる。
そんな夕焼け空の時のものだった。
といっても、撮ってくれたのはお父さんで
その帰り道で
ショートカットと称して家伝いに飛んでいった時に偶然
その瞬間に遭遇し、写真に収めたらしい。
気に入っていたのだが
持ってくることは出来なかった。
大事過ぎて、身につけ続けていたつもりだった。
それでも、あの事件の夜…
私は、戦おうとした。
その時に、気付かないまま
大事にしていた写真は、瓦礫の中に埋もれていた。
失ったと思ってた。
もう、視れないと思ってた。
それが…
最も、大切に想っている人が持っていた。
それだけでなく、待ってくれていた。
9年も、ずっと…
それがわかっただけで
私は、死ぬほど嬉しかった。
あんな風に想ってくれていたことも、全部…
だから、やっぱり思ったんだ。
『人間同士だと…
清らかな部分だけじゃ、生きていけないこともある。
醜い感情だって、抱えて生きていくこともある。
でもね…
どうしても、生きていかないといけないの(涙声&涙目)
だって…
そのおかげで、あなたと出会うことができたから(涙』
お母さんの言ってた言葉が、胸をよぎる。
生きることは、この上なく辛い。
死にたくなる時なんて、何度でもあった。
それでも…生きてて
だからこそ得られる、大切なものがあるんだって……
より、私は深く実感した。
戦ってきた時も
今に至るまでの日々も、これまでの瞬間も…
全部…
全部が、今に生かしてくれたのだと。
そしていつか…
それまでの時は、『繋がり』となる。