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血と血は繋がりて

第1章 プロローグ


🌸🌸🌸

 べリアルの足は一人の人間の前に止まる。他の八人よりも弱小なモノ。

「ほう……貴様が”独神”か……。」

 足元の人間の小さき頭を片手で鷲掴み、自身の顔の高さに来るように持ち上げる。
 男とも女とも言えない中性的な顔立ちの小柄な人間。この黒く、霧がたっているべリアルの根城でもこのモノの紫色の目は紫水晶の様に輝いている。

「主様!!」
「テメェ……そいつを離せ!!」

 ”独神”と呼ばれたモノよりかは動ける力は残っている。だが、前衛だった故にべリアルの攻撃である隕石の衝撃を受けていた為、体を起こすのがやっとであった。

「シキ!!」

 目が虚ろとなっている独神に対して、ヤマトタケルは独神の名前を出せる限界の声量で呼ぶ。
 もう少し力があれば、目の前で持ち上げられている大切な者を救えた。いや、参加などさせなければ良かった。

「……興が醒めた。草薙剣はまだまだ血が足りんと言っているがーー遊びはしまいだ!!」

 相も変わらず手に持つ大剣を大きく振り上げる。

「手始めに、このモノを消そうか。殺すのにもつまらん。が、貴様等の方が面白そうだからな。せいぜい、我を楽しませろ!」
「っ!!主……シキっ!逃げーー!!」

 普段の無気力さは何処に行ったのか。通常のヤマトタケルを知っている者達が見たら、驚くだろう。
 それ程、必死な形相で自身の大切な者の名前を呼び、逃げる様に意識が無くなってしまいそうな独神に叫ぶ。
 無情にもべリアルの得物は無慈悲に独神へと振り下ろされる。
 満身創痍な誰もがその光景に、自分の無力さ、独神自身の非力さに目を見開いた。
 ああ、大切な自分達の主が目の前で殺される……。日の様に鮮やかな朱色の瞳に独神の姿が反射する。
 刃は速度を上げ、独神の顔面を狙っていく。この速さなら、真っ二つにもなり、死ぬであろう。誰もがそう思った瞬間だった。

「っ!?なんだ!!」

 止まった。べリアルの大剣は、独神の前髪すれすれにその刃を止めた。否、止められた。

「動かないだとっ!?」

 幾ら片手に力を加え押し切ろうと試みようが、前髪から先へとは進まない。まるで大きな力で抑え込まれている様に思えた。

「生きなくちゃ……死んじゃ駄目なんだ……。」

 虚ろな瞳は健在のまま、独神の中性的な顔が上を向く。紫色の目がべリアルの顔を映す。
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