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血と血は繋がりて

第1章 プロローグ


 現に、また立ち上がろうと今度は、大太刀を杖の様に扱い強制的に膝を伸ばそうとする。
 自分の傷ついた体を酷使しようとする。そんな光景に息が詰まる程、苦しくなる。
 ねえ、何でボロボロなのに立とうとするの?何で、こんな奴を守ろうとするの?
 主だ、何だといつの間にか奉られて、八百万界で一番強い八人の主となった私。
 皆みたいに強くない。皆みたいに何かに秀でている訳じゃない。

「その通り!チビの割にはいいこと言うぜ。」

 悶々と後ろ向きな感情しか出て来ない私の耳に、聞きなれた暴れん坊の声が聞こえた。

「さっきはオマエらに任せっきりだったからな。借りはきっちり返す。」

 手をボキボキッと鳴らしながら、今度はモモ達の前にスサノヲが出ていく。

「でも、君たちだって力は残ってないはず……!」
「そうね。勝っても負けても、おそらくこれが最後の戦いになるでしょう。」

 ウシワカの言葉にアマテラスが答える。弟の言葉に、感化されたのだろう。背に持っていた弓に手を伸ばし、ぎゅっと握りしめる。

「だけど、コイツさえ倒せば……侵略された土地は帰ってくる。八百万界の脅威も消え去るわ。」
「だったら、何がなんでもここで仕留めなきゃな!そうだろ、主!?」

 私に背を向け立っていたスサノヲの目が私に向けられる。
 何で、私に言うの?
 いつもそうだ。奉って”私”を”主”として、戦いや皆の命の責任を私に負わせる。
 これで頷いてしまえば、皆、文字通りに命を削ってしまう。

「なあ、主!」

 急かさないでくれ!!そう、叫んでしまいたくなった。
 こんな軟弱な奴を必要だと言って、慕ってくれたのは正直に言って嬉しかった。でもーー、

「無理だよ……。」

 皆に聞こえない様に、顔を伏せて言葉を漏らした。それと同時に目の奥まで熱くなって、鼻の奥が痛くなる。
 皆の力と引き換えに、八百万を救う。皆、決心している。その硬さは本当に堅そうだ。

「主に聞くまでもない。」

 私には、自分を犠牲にしてまでそんな事は出来ない。そんな思いも考えも浮かんでしまっている頭を、誰かが撫でていく。
 誰かなんて、そんなの解ってる。

「タケル……。」

 背を私に向け、一切目が合わない。ヤマトタケルの名前を口にすれば、彼は陽の様な色の目を私に合わせてくる。
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