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血と血は繋がりて

第2章 八傑の血を継ぐ者


 と、言うもののブチ切れそうになったのに駄目じゃんね。
 少し戸惑いつつも胡坐を掻く姿勢へと変えたタケミカヅチに、私は頭を下げた。

「昼間の無礼を許して頂きたい。あの鬼には私も言っておくから。」

 突然の行動に驚いたのか、「頭を上げてくれ!」と困惑した様子だった。

「それと……しっかりと自己紹介もしていなかった。」

 これ以上相手に迷惑は掛けられないので、顔を上げて笑顔を見せた。

「私は彼等の主なんて言われている、八百万界に生きる一住民のシキです。名前は別に呼ばなくても良いし、只、あるだけの存在だから。」

 タケミカヅチは、唐突の自己紹介に唖然としてしまった。まあ、その反応は正常です。私も何で今、自己紹介してるんだろうと若干、後悔しています。

「雷の軍神、タケミカヅチだ。必ず主君とともに、八百万界を守り抜いてみせよう。」

 彼も何回目なのか、自己紹介をしてくれた。
 やっぱり、あの八傑達と違う。血は継いではいるけど、根本的な礼儀正しさというか、事件を起こす主犯じゃないような。
 八傑の中でもしっかりとしている人はいるよ?でも、強すぎる個性でそれ所じゃない。

「宜しくね。タケミカヅチ。」
「ああ、こちらこそ。」

 私が願ったのは、悪霊にも負けず自分の意見を持った者が良い。私も力になれるそんな英傑。
 だが、この言葉には自己中心的に意見を通すのではなく、状況をしっかりと把握した上で最善の意見を行使出来る者。……あの個性のぶつかり合いの塊の様な意見を持つではなくて。
 彼が、何処まで成長して何処まで強くなるのか。そんな彼を見守り、支え、自分の力で大切なモノを守れるのか。

「そんなの、『誰かのみぞ知る。』だよね……。」

 ボソッと呟いた声に、「どうかしたのか?」と反応してくれる目の前の軍神に、笑顔で何も無いと私は言う。
 本当の物語は、もう幕を開けている。
 深夜に訪ねて来てくれたお客さんと私の会話は暫くの間、蝋燭で煌々と照らされた部屋で続くのであった。
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