第2章 八傑の血を継ぐ者
シュテンドウジは疲労感と満足感で沢山の体を押して、アマテラスから逃げようと試みた。
「言わんこっちゃない。」
ウシワカマルは呆れた様に、無事、アマテラスに捕まったシュテンドウジを見やる。
独神は黙ったままこの光景を見ている。無表情の真顔のまま。
「……疲れたから、部屋に戻るよ。」
隣にいるヤマトタケルに、小さな声で告げた。賑やかな周りの声に掻き消されそうだが、ヤマトタケルの耳には独神の声が聞こえていた。
「アマテラスがきつく言っておくだろうな。諄い程に。」
分かった。や了解。ではなく、独神が考えている事を先回りして返答する。
一瞬、目を大きくするが自分の怒りに気が付いていたのが解ったのか、頷いて本殿の中へと歩みを進めた。
「……。」
タケミカヅチは何を考え込んでいるのか、シュテンドウジとの一戦の後から今に至るまで、自身の手の中の得物を見ていた。
「タケミカヅチ殿?どうされました。」
その姿を不思議に思ったのか、白い八咫烏がタケミカヅチに近寄る。羽音と共に、タケミカヅチの目の前にある大きな岩に足を付けた。
「いや……強かったな、と思って。先に消耗してくれなかったら……確実に負けていた。」
「ああ、シュテン殿ですか?」
剣を見ていた目を八咫烏に向ける。八咫烏は何を言いたいのか瞬時に理解し、話に出た相手に視線を向ける。
その話に出た張本人は妹にしつこいと言われたアマテラスの説教に近い話を、聞かされていた。
「当然でしょう。力を失っているとはいえ、≪神代八傑≫と呼ばれたお方ですよ。……性格は少々残念ではありますが。」
また、目を座らせて溜息を吐く。
「神代八傑は強い……。だが、その八傑をもってしても、魔元帥べリアルには勝てなかった。」
「ええ、そうです。タケミカヅチ殿もこれで分かったでしょう?アナタがこれから戦う敵が、どれだけ強大なものか。」
実際に元最強と戦い、自分が創り出された要因について理解した。八咫烏は少し、絶望の色を見せていた。
「……ああ。だが、希望も出てきたぞ。」
普通の者なら、ここであまりの強大な敵に絶望するだろう。だが、秘術で創り出された軍神は違った。
「は?」
「俺は、その最強である≪神代八傑≫の血を継いでいるんだ。今は弱くても、この先強くならないはずがない。だろう?」