第2章 八傑の血を継ぐ者
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独神がヤマトタケルとジライヤの血から創り出したタケミカヅチは、喧嘩に物足りなさを感じたシュテンドウジに絡まれ、腕試しと称したサンドバックにされそうになっていた。
「……いいだろう。それで認めてもらえるなら。」
だが、本人は腕試しをしてくれると本気で思っている。ノリノリで腰に差している剣を取り出し、シュテンドウジに向け構えた。
「このタケミカヅチ、相手になろう。」
何処かで法螺貝の音が聞こえた様な気がした。
「おらっ!どうした!!」
シュテンドウジの馬鹿力のパンチの雨、嵐がタケミカヅチを襲う。
創り出されてから初めての戦闘、戦う事に慣れていないのか単にシュテンドウジの力が強いのか、剣で拳をいなしていくので精一杯であった。
かわしていた拳が腹部に入る。血を吐くまでとはいかないが、腹部の強烈な圧迫から一瞬呼吸が出来なくなる。
流石は八百万界で最強と謳われていただけはある。だが、今となってはその名は過ぎたものである。
タケミカヅチに強烈な拳をお見舞いした後、シュテンドウジにも異変が出てきた。
「ああ……?」
力を独神に渡した後遺症。本人にとって力を失う以前と同様にじゃれ合うかの様に、力を行使したはずだった。
たった数回、タケミカヅチにーー相手にパンチを繰り出しただけで体の脱力感、疲労感がシュテンドウジを蝕んでいく。
「今だ!」
自身の異変に気を取られたシュテンドウジに、タケミカヅチは今までいなす事に使用していた剣を振り翳した。
仲間になる相手には傷を付けずに、だが勝つように。剣の峰でシュテンドウジの体を狙った。
謎の疲労感、それに注意が散漫した結果、タケミカヅチの攻撃をもろに食らい膝をついた。
「はぁ、はぁ……。チッ、この程度でこんなに消耗するなんて……。」
肩で息をしながら、膝が付いたついでに座り込んでしまった。
勝利したタケミカヅチも立っている事がやっとであり、シュテンドウジによって生傷が幾つも体中に出来上がっていた。
「ちょっとシュテンくん!!何してるの!!」
弟の説教が無事に終了したのだろう。彼女が弟に怒りを表している間に起こった騒動に、彼女も参戦した。
「げっ……。」
腕試しだという前にウシワカマルが言っていた事が、現実になってしまった。
アマテラスの顔を見ただけで、嫌な顔をした。