第2章 八傑の血を継ぐ者
半ば無理やりに八咫烏の口に、きび団子を押し込む。口の中に強制的に入れられてしまえば、食べるしかない。
モモのきび団子は美味しいらしい。
「おやおや、餌付けされてしまいましたね。」
さっきまでのシュテンとスサノヲに見せていた笑顔は何処に行ったのか、今は純粋な笑顔でウシワカが笑っている。
「……。」
私の目からもコレは溜息しか出ない。だから、この光景を初めて見たタケミカヅチは言葉を失って、驚くのはしょうがないと思う。
各々が自由にし過ぎて……いや、我が強くて協調性が皆無な人達。幾ら強い力を持っていたとしても、それに伴って劣っている所があるのは当たり前。
只、彼等の劣っていたのはそこであるって事。
「あー……スサノヲの野郎、バカ力で殴りやがって。」
右側の頬を赤くして、傍観に徹していた私達の所に騒動の張本人の片割れが来た。
力は失ってもスサノヲの怪力は健在なんだね。あれは、純粋な筋肉の力なんだね。
「スサノヲ様は?」
「あっちでアマテラスに説教されてる。」
ウシワカが代表として、もう一人の騒動の張本人の所在を聞いた。シュテンは右頬を数回撫でながら、指を指す。
シュテンの指が示した方角では、仁王立ちで腕を腰に当てているアマテラスと、正座をさせられてアマテラスに説教をされているスサノヲがいた。
「ふっ、いい気味。」
「冗談じゃない。こっちはまだ気が済んでねェってのに。……そうだ!おい、そこの。」
懲りてはいないようだ。かつ、足りない。とまで供述していますよ!この鬼。
そろそろ私も怒りに転じて仕舞いそうだ……。いつもの事なら呆れて終えれたものを、初めましての人がいるにも関わらず最低の礼儀すらないとか。
挙句の果てにはーー
「俺のことか?」
「おまえ、おれたちに認められたいんだろ?だったらちょうどいい。相手になれよ。」
初めましての相手に、決闘までとはいかないけど戦いを吹っかけやがった。しかも、彼にとっては創られて初めての戦いであるのに。
「ケンカなんてしたら、君もアマテラス様に怒られるのでは?」
「ケンカじゃねェよ。これは腕試しだ。」
腕を回しながら、シュテンはニヤニヤと笑う。
「俺は知らねえぞ。……どうなっても。」
タケルは一瞬、私を見て溜息を吐いた。私はそれ所じゃなくて、この感情を何処にぶつけようか考えていた。