第2章 八傑の血を継ぐ者
だが、それ以上に冷たい反応を見せたのは八傑の一部の人間だった。
「ハッ!なーにがよろしく頼む、だ。こんなヤツ、オレ様は認めねえぞ!」
「不本意だが、今回ばかりはスサノヲに同感だ。こんなヒョロッちいののために、力を全部やっちまったなんて……最悪だ。」
シュテンとスサノヲだった。始めましての人が彼等を見たら、恐怖で慄くだろう。顔が怖いし、シュテンに至っては”鬼”だから。
私も初めて会った時は、凄く距離を空けていた事があったな……物理的に。
そんな彼等がタケミカヅチとやらの元へ、メンチを切りに行っていた。大男二人が平均的な男性の身長位の男を囲むなんて、何処のかつあげ屋だよ……ホント。
「まあまあ、おふたりとも。ひとつお忘れではありませんか?」
鬼と暴れん坊の元へウシワカが近づく。シュテンとスサノヲは仲が悪い癖して、同時にウシワカへと振り向く。
「ああ?んだよ。」
「主様がお認めになったから、タケミカヅチ様はここにいるのですよ。彼を非難することは、主様を否定することになると思いますが……それについてはどうお考えで?」
にこやかな、それはそれは美しい笑顔で強面顔の大男二人に質問する。
その笑みは私から見たら黒色に見えそうな……うん、なんでもありません。
「主さんに言いつけてやろ。」
「いや、全部丸聞こえだから!主さん、ここにおりますから!!」
言いつける前に、言いつけてやる張本人がいるのに言いつけるとか意味無くなってるよね?
答えられない二人をざまぁ!と言いながら、クスクスと笑うモモ。二人は可哀想だとは思うけど、それ以上に気になっている事があった。
「私が彼を認めた?一血卍傑って、そういうものなの?」
「お前はあの時、何を願ったんだ?」
隣にいたタケルを見上げ、黙っている彼に聞いてみた。知識が無い奴なのは分かってる。
でも、一血卍傑の情報は何処にもありやしない。あったとしても大体が「老若男女、どの種族とも出来ます。だが、命を懸けろ下さい。」としか書いてなかったから。
「あの時ーー、」
気絶する前の記憶を思い出す。タケルとジライヤに血を分けて貰い、その前で私は掌を組んで祈ったんだっけ……?
『悪霊にも負けず自分の意見を持った者が良い。私も力になれるそんな英傑ーー、』
「じゃあ、私の願いが具現化したのが彼って事?」