第2章 八傑の血を継ぐ者
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独神はフラッと体が揺れながら、部屋の外へと行ってしまった。一刻も早く感謝の言葉を言いたかったからだ。
「主ちゃん……まだ、ふらついてるじゃない!あんな状態なのに大丈夫なのかしら。ねえ、オネエサマ。」
ツクヨミが同意を求めようと姉に話しかけるが、当の本人であるアマテラスは独神が出て行った後に視線を向けながら、上の空になっていた。
「ちょっと!?オネエサマ!!」
返事が返ってこない事に不満を抱いたのか、強めにアマテラスの事を呼ぶが、まだうわの空である。
「オネエサマ!!」
三回目にしてアマテラスは自分が呼ばれている事に気が付き、慌てて返事をした。
「さっきから呼んでいるのに……。どうかしたの?」
「え?あ……うん。主さまの事について……。」
「主ちゃん?」
アマテラスは頷き、言葉を続ける。
「あの一血卍傑は、私たちの最後の力だけじゃないと思うの。」
「そりゃあ、当たり前でしょ。だってべリアルの根城から自凝島まで連れて来たのは主ちゃんだもの。」
「そうね……。だから、私たちの力は無くとも一血卍傑は完成して主さまは使えていたのかもしれない。」
「何が言いたいのよ!」
はっきりと言うとあまり頭の回転が速い方ではないツクヨミは、アマテラスのはっきりとしない言い方にイラつきを覚えていた。
「主さまの命が助かったのは……主さま自身のお力だという事だと思うの。私たちの力はほんのきっかけ程度。」
「でも、主ちゃんの力って八傑の力を失ったワタシたち以上に、言うのもあれだけど……弱いでしょ?あの時のだって火事場の馬鹿力ってやつじゃないの?」
幾ら力は弱くとも、命の危機に瀕したら予想外の力を人間は行使する。ツクヨミはあの時の事をそう思ったらしい。
だが、アマテラスは違った。べリアルから逃走し一血卍傑の際に気付いてしまった。
「本当は私たち以上に強いのかもしれない……主さまは。火事場の馬鹿力も、主さまの力のほんの一部だと思うの。」
「オネエサマは、主ちゃんが本当の力をーー八傑時のワタシたちよりも強い力を持っていて、態とその力を使わない様にしていたんじゃないかって、言いたいの?」
ツクヨミが簡潔にしたアマテラスが言いたい事を聞いて、アマテラスは静かに頷いた。
「そんな事、主ちゃんはすると思う?」