第1章 プロローグ
「……もうひとつは?」
二つある提案の内の一つを聞き、ツクヨミは二つ目を促す。
「この身に残っている力を頭領に託し……秘儀≪一血卍傑≫を完成させる。」
「えっ……!?」
思わぬ私の名前に、二つ目の提案を言ったジライヤに顔を向ける。
皆の残りの力を私にって……いや、無理でしょ?
「なっ……正気かよ!?」
「今の俺たちの代わりに、べリアルに対抗する存在が必要だ。そのためには新たな英傑を創り出す≪一血卍傑≫しか方法はない。」
ジライヤの意見は最もだった。シュテンが『力が無くなっている。』と言ったのは本当だ。今まで、息を吸うのがやっとな程の大きな力を感じていたのに、今はその面影すら感じられない。
「確かに他に手はねェが……おまえら分かってるのか。おれたちはすべての力を失うことになるんだそ。」
「もとより残りわずかの力。敗北のまま朽ち果てるくらいなら、僕は喜んで主様に委ねますよ。」
傷だらけでもその美しさは損なわれないウシワカが、座り込んでいる私の前に移動してきた。
「コイツらと血を混ぜるなんて嫌だけど……負けっぱなしは、もっと嫌だわ。」
そう言って、ウシワカの隣にツクヨミが座る。
「っ……おい、主!」
勝手に進んで行く話に付いて行けずに、只、目の前で繰り広げられる会話を聞き流していた。
そんな状態にいる私にスサノヲが話しかける。
「オマエはそれでいいのかよ。≪一血卍傑≫をするっつーことは、オマエだってどうなるか……!」
さっきから彼等の会話に出てくる≪一血卍傑≫と言うのは、老若男女関係なく、更に種族も関係なく代表者二名の血を混ぜ合わせる事によって、新たな英傑を産み出す秘術。
誰もこの秘術を使えず、過去にもそれが使えた者がいたのか私が知っている範囲ではいない。
只、人を産み出す大きな力を持つが故にその代償は大きく、命を落とす場合もある。
「控えなさい、スサノヲ。……決めるのは主さまよ。」
アマテラスがスサノヲの発言を咎めるが、私は良いんだよ。と返した。スサノヲは只、私の身を案じてくれただけ。不思議な力を持っているだけの普通の人よりも弱い奴。
情が少しでもある奴なら、心配しても可笑しくはない。
「……。」
黙り始めてしまった私にアマテラスは続ける。