第1章 プロローグ
体が悲鳴を上げて、これ以上は無理だからって気絶したのかな……?
気絶したからなのか、取り敢えずは体を起こす事は出来そうだった。体を起こすと、アマテラス、そしてヤマトタケルだけでなく全員が私を取り囲むように集まっていた。
「何を考えているんだ。危機だったとはいえ、あの場を離れるために……最後の力を使うなんて。」
「最後の力……?どういう事?私がコレをやったの?」
力を使った。私にはその記憶がない。
でも、一部除いた全員の顔が私が力を使ったと言っている。もう、べリアルの時に使い果たしたと思っていたのに……。
「でも、助かりました。主様がいなければ今頃……僕たちは全員、べリアルに蹂躙されていたことでしょう。」
蹂躙……ウシワカのその言葉の中の単語に、全員が苦虫を噛み潰したような苦い顔を見せる。
うっすらとした記憶の中では、私、べリアルに鷲掴みされていた様な……。朦朧としていて霞んでいた視界での思考がままならない状態だったから、定かじゃないけど。
「そっか……。」
「それにしたって、無茶しすぎなんだよ。まあ、頭のことばっかり言えねェか……。おれらも、もう戦えるような力は残ってない。」
私の頭を乱暴に、それでも気遣う様に優しく、青く染めた長い爪の大きな手でシュテンは私を撫でる。
撫でている手とは反対の手を広げたり閉じたりを繰り返しながら、顔に悔しさを滲ませる。
「クソッ、どうすんだよ!このままあのヤローを放っといたら、八百万界ごと支配されちまうぞ!」
近くの大木をスサノヲは怒り任せに殴る。幸い、木は折れる事はなく緑の葉が落ちる程度で被害が収まった。
「だからって、無謀な戦いを仕掛けるわけにはいかないでしょ!?私たち抵抗勢力が消えれば、それこそ向こうの思う壺です。」
完全に起きた私から手を放し、弟のスサノヲに体を向ける。
「悔しいけれど……今のこの界に、私たち以上の力を持つモノはいないのよ。」
そう、私を除いたこの八人が八百万界の中で一番力を持っていた。唯一、悪霊達に抵抗できていた。そんな存在だった。
「……僕たちに残された選択はふたつだけだ。」
今まで沈黙を貫いていたモモの口が開く。モモの言葉に全員が耳をかた向ける。
「ひとつは、再びべリアルに挑む。無駄とは分かっているけれど、名を馳せた英雄としての誇りに懸けて。」
