第2章 ◇ episode 01
傘を取るために一瞬家に入り再び外へ出て階段を降りる。雨が降っているからなど関係無く家の前の道には人々が歩いている。階段を全て降り終えてコンビニに向かおうとした時、万事屋の下にあるスナックから一人の女が出て来た。
「おや銀時、家賃も返さず何処に行くつもりだい?」
「げっ…んだよ、次はテメェかよ。コンビニだよコンビニ。」
“スナックお登勢“から出てきた女は、その名の通りお登勢。話を広げられないうちにそそくさとお登勢の前から立ち去ろうとした時、家賃とは全く関係の無い、思わず耳を傾けてしまうような話がお登勢の口から語られた。
「ちょいと銀時、最近ここらで人が斬られまくってるって話だ。アンタも気を付けな。」
「何?俺がそんな適当に刀振り回してる奴に斬られるとでも思ってるわけ?」
「ったく、忠告した私が馬鹿ったよ。」
心配した人の気も知らず銀時の対応を見てお登勢は呆れ返り、懐から煙草を取り出すと火を付け吸い始める。煙草の煙が雨に打たれ消え行く中、お登勢は再び口を開いた。
「……昼夜問わないそうだ。悲鳴も聞こえない、一瞬だってね。まるで麻酔を撃たれたみたいだって皆騒いでるよ。」
お登勢の言葉を聞いて、そこら辺の輩の仕業では無いと銀時は思った。相当の剣の腕が無い人間にそんな事は出来ないと分かっていたからだ。何も言葉を返さない銀時にお登勢は、もう一度忠告をして店の中へと戻って行った。
「はぁ…。ジャンプ買いに行こ。」
銀時は面倒くさそうに足を動かし、ジャンプを求めコンビニへと向かった。
未だ降り続く雨の中、銀時はコンビニに着きジャンプを手に取り、それに加えイチゴ牛乳も手に取ってレジへと向かった。するとレジの店員に突然声を掛けられた。
「あ、銀さんじゃん!いらっしゃい!」
「あ、長谷川さんじゃん、いらっしゃいましたー。」
声を掛けてきたのは長谷川泰三という男だった。知り合いに会えて嬉しいのか少しテンションの高い長谷川と、無表情を保つ銀時。銀時の塩対応に悲しくなった長谷川は肩を落とした。
「んだよ〜、どうしちゃったんだよ銀さん。」
「どうしたも何も、こんな天気じゃ気分も上がらねェっての。」
そう言う銀時を心配しながら長谷川はジャンプとイチゴ牛乳のバーコードを読み込んで行く。