第2章 ◇ episode 01
銀時は会計を済ますと素っ気なくコンビニから出ようとした。そんな銀時を長谷川は店員という立場という事を忘れ大声で呼び止めた。
「ちょっと銀さん!最近ここらへん物騒だから気を付けてよ!!」
銀時は怠そうに右手をヒラヒラとさせ、振り返る事無くコンビニを後にした。
傘を広げ家に向けて歩き始める。覆いきれないコンビニの袋が雨と傘から垂れ落ちる雫で濡れ、中のジャンプを濡らさまいと抱き抱える様に袋を持ち替えた。
「なーにが人斬りだっつぅの。俺みたいなの斬ったところで糖分しか出てこないよ?…あれ、糖分自己生産?エコじゃね?」
訳の分からない事をブツブツと呟きながら近道をする為、行きとは違う道を通りいそいそと足を進める。相変わらず死んだ魚の様な目をしたまま歩いていれば、ふと視線を感じた。
その場に立ち止まり振り返ってみるが誰かがいる訳も無く、気のせいかと前を向き再び歩き出そうとした時だった。
「!?」
突然人の気配を強く感じ、傘を放り投げその場から離れた。焦っていたのも束の間、さっき自分が居た所に刀を振り下ろした後の人影が見えた。
「避ける人、貴方が初めて。」
「ふっ。お前がここらで暴れ回ってるっていう人斬りってわけか。」
刀を持った人物はゆっくりと立ち上がり、そして真っ直ぐ銀時の方を見た。その人物を見た時銀時の眉がピクリと動き、目を疑った。雨でハッキリとは見えないものの、自分の目に映ったものに驚きを隠せなかった。
「……女のくせに人斬りたァ、親父さんが泣くぜ?」
「……うるさい、私に父親なんて居ない。」
銀時に斬り掛かって来たのは男では無かった。それも決して体格が良いとは言えない、寧ろ華奢な身体をしていて、淡麗な顔を持った女だった。銀時はお登勢が言っていた言葉を思い出し、“まるで麻酔を撃たれたみたい“という術を女ならではの剣術かとも一瞬思ったが、そんな事を考えても意味など無く、相手が女なだけにどう出ていいものかと必死に頭の中で考えていた。