第1章 ◇ episode 00
「さて、お楽しみはこれからだ、ちゃん。」
媚びる相手が居なくなった余裕からか、突如えらそうに立ち振る舞いを変える二人の男。逃げるにも目の前には壁、窓から飛び降りようにもここは二階。夜という事もあり安易に身を投げる勇気は女には無かった。
ジリジリと近付き手を伸ばす男達に女は為す術もなく、目をギュッと瞑り、現実から目を背けようとした。しかし逃れる事など出来るはずも無く呆気なく捕まってしまった。
「あれ、もっと抵抗するかと思ったのに。」
「何だかんだ言ってこの女もヤりてぇんじゃねぇの?」
抵抗しない女を前に男達は少し残念に思ったが、女の顔を見てそんな感情等消え去った。全てを諦めたような表情で僅かに零れる涙は男達の理性を吹っ飛ばした。
「そそるねぇ…もっと泣きわめいてもいいんだぜ?」
「……っ、や……っ!」
男達の手が自分の地肌に触れた瞬間我に返ったのか、すかさず抵抗するものの力で勝てるわけも無く押さえ込まれてしまう。首、胸、腹、太股、あらゆる場所を這い回る手と荒い息づかいが女の恐怖を更に煽った。
そして一人の男の手が秘部へと伸びた時だった。
その伸びた手は目的地へ辿り着く事無く止まり、男は倒れた。女は何が起こったか分からず、ただ目を見開き倒れた男の方を見れば真っ赤な液体が床を濡らしていた。もう一人の男の顔は見る見るうちに青ざめ、奇声を上げその場から逃げようとした。
だがそれは許されず、その男もまた声を出す間もなく血を流し倒れた。
女は自分が今置かれている状況が分からず、暗い部屋に見える一人の人影の方へと恐る恐る視線を向けた。
「……れ、ん?」
「、出るぞ。直にアイツが戻ってくる。」
「え、ちょっ……!」
見覚えのある容姿に気付き名前を呼んで確認をしようとした瞬間、その男は女の手を引き古民家を出た。
「ま、待って…、れん……蓮ってば!!」
「……!!あ、ご、ごめん。」
家を出ても尚走り続ける男に、女は少し怒りを混じえた声で名前を呼んだ。走る事に夢中だったのか名前を呼ばれた途端足を止め振り返り謝罪の言葉を漏らした。