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【 銀魂 】泥中の蓮 ◇ R18

第1章 ◇ episode 00




女は膝に手を当てながら息を整え、落ち着いた後男を見上げた。まるで何事も無かったかの様な表情を浮かべているその男に聞きたい事は山ほどあったが、言い出せば限りがなく、最も気になることを問うた。


「……蓮、どうしてここに?」

「襲われてる所助けてやったってのに、第一声がそれかよ。」

「もう!そんな事言ってる場合じゃないし!!」


男は質問に答える素振りを見せず突っかかる。それにより先程までの出来事がまるで夢だったかのようにその場は和んでいた。

お互い小さく笑い合った後、女は愛おしそうに男を見た。男もそれに答えるように女を見た。


「蓮……私、ずっと……、」

「おい!見つかったか!?早く探し出せ!!」


女が言葉を発しようとした瞬間、数人の男の声が聞こえた。女はすぐに自分の事を探していると分かった。もし捕まれば今までの様にはいかないと、最悪殺されてしまう、その恐怖から逃げようと思っても足は震え動かなかった。


「、行け。ここは俺が何とかしておく。」

「や、やだ…やだよ蓮……。もう一人は嫌だ…蓮も一緒に来てよ…。」


一人逃がそうと、自らの腕にしがみつく女を無理矢理離そうとした。だが簡単に離れるはずもなく、次第に近付いてくる声と足音に警戒心は更に強まった。このままでは見つかってしまうと思い、男は泣きじゃくる女を自分の胸へと抱き寄せ、触れるだけのキスを落とした。


「………蓮?」

「お前は一人じゃない。分かってんだろ、俺はちゃんとここに居るから。」


唇を離した後、そう言いながら男は女の左肩を強く握った。女は大人しくなり、身体を離した後も縋り付く事は無かった。いい子だ、と男は女の頭を撫で、女は俯いたまま静かに泣いた。


「ほら、行け。出来るだけ遠くに。必ず迎えに行くから。」

「……約束。破ったら死んで呪ってやるから。」


そう言って女は男と別れ、体力が許す限りひたすら夜道を走った。走っている間、止まることを知らない涙は風と共に流れていた。



時期は梅雨真っ最中の夜。
ここから美乃の壮絶な人生の始まりだった。


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