第3章 ◇ episode 02
中にいる女が作っている以上無闇に急かせず、さすがの銀時もおばさんの話す様子を見て今回ばかりは遮る事が出来なかった。。それに加え、不思議とその場の全員がその女と出逢った経緯が知りたいと思っていた。
するとそんな思いに答えるようにおばさんは口を開いた。
「あの子と出逢ったのは半月くらい前かね。もうその時はびっくりしたよ、ボロボロでさ。」
銀時は無関心を装い気だるそうに話を聞いていた。その他三人はその真逆で、その話に聞き入っていた。
「狭い路地裏で蹲って泣いてたんだよ。声を掛けても泣くばっかりで何も言いやしない。それでも放って置けなくて、泣きやむまで待ってたの。ようやく口を開いたと思ったらあの子何て言ったと思う?」
「……………。」
「“お腹がすいた“だってさ。笑っちゃったよ。」
話をしている間、終始嬉しそうな表情を浮かべているおばさんを見て、銀時を除いた全員の顔は自然に綻んでいた。
「それでここに来たんですか?」
「えぇ、帰る場所も無いって言うもんだからそれならここにと思ってね。本当に娘が出来たみたいで毎日幸せだよ。」
“帰る場所も無い“その言葉に全員が引っかかったが、だからと言って聞く事にも抵抗があり、そもそもおばさんが知っているとも限らないと思い誰もその事には触れなかった。ただ、出逢ってまだ間もないにも関わらず、その女の事を大事に思っているという事は銀時達に十分すぎる程伝わった。
「ま、愛想の無い子だけどいい子だよ。仲良くしてやってね。」
「このかぶき町の女王、神楽様が友達になってあげるネ!!」
我先にと友達宣言を名乗り上げる神楽に、おばさんは満面の笑みでありがとうと言った。
話が丁度終わったのと同時に店の奥から女の声がした。
「おばちゃーん!団子出来た、運ぶの手伝って貰っていい?」
「はいよー!お待たせしちゃって悪いね、すぐ持ってくるからね。」
そう言っておばさんは店の中へと入っていった。