第3章 ◇ episode 02
家に着けばテレビを見る神楽と、帰る支度をする新八の姿があった。おかえりなさいと、新八は銀時に声を掛けたが先に返ってしまったことに怒っているのか返答は無かった。そんなムスッとした銀時の手に持たれた袋に視線を向ければ先程のイチゴ牛乳がチラついて見えた。
「銀さんそれ、譲ってもらえたんですね。」
「ちげェよ、奢ってもらったんだよ。」
「……アンタって人は本当に大人気ないですよ。」
最後までやり取りを見ていなかった新八達の反応は当たり前のもので、見ず知らずの女から取り上げた上に奢らせたと勘違いしていた。銀時はそんな勘違いを取り払う為、面倒くさそうに話し始めた。
「言っとくけど違うから。脅して奢らせたとかそんなんじゃないから。」
「じゃあ何だって言うんですか。」
「アレだ、あの女だよ、前言ってた俺のジャンプびちゃびちゃのぐちゃぐちゃにしたやつ。」
「え!?って事はあの人人斬りだったんですか!?」
そういう事、と銀時は鼻をほじりながらジャンプを手に取り読み始める。その横で神楽も袋に入った酢昆布をワサワサと取り出し封を開け食べ始める。
「でも最近ニュースで見なくなったってことは、人斬りやめたんですかね?」
「さァな。あいつが人斬りだろうがそうじゃなかろうが、俺には関係無ェし〜。」
相当ジャンプの件を根に持っているのか、必要以上にその女の話をしようとしなかった。新八はひとまず銀時が無事ならそれで良かったと区切りを付け、姉の居る道場である実家へと帰って行った。
新八が万事屋から出て暫く経った後、神楽が思い出したかの様に言った。
「そういえば銀ちゃん。」
「何だ〜?」
「銀ちゃんとイチゴ牛乳取り合ってた子が持ってた籠の中、甘い物でいっぱいだったアル。」
最終的に神楽が言いたい事が分からず、だからと言って考えるのも面倒なので銀時は適当に返事を返す。
「だから何だってんだよ。」
「もしかしたらあの子も…銀ちゃんみたいに糖尿病なのかも。」
「銀さんまだ糖尿病じゃ無いからね!!!」
結果、神楽の言葉に深い意味は無く銀時の否定の声だけが虚しく響いた。