第3章 ◇ episode 02
「……………。」
「……………。」
暫くの間沈黙が流れた後、この前の様に先に動いたのは女の方だった。やばいと感じたのかさっきまであれ程頑なに離そうとしなかった手をパッと離し、そそくさとその場を去ろうと踵を返そうとした。
だがそれは銀時の手によって遮られてしまう。
「おい姉ちゃんよ〜、この前の事まさか忘れたとは言わねェよなァ? 」
「なっ!離してよ!過去の事ズルズル引き摺って恥ずかしく無いわけ!?」
女の声がコンビニに響き渡り、店員も焦り始める。険悪なムードに誰も二人の近くに行こうとする人は一人たりとも居なかった。
「人の事殺そうとしといて何言ってんだよ。俺だってそう優しい人間じゃないんでね。」
「はっ、離してってば!馬鹿!阿呆!う◯こ!!」
「……女がそんな汚ェ言葉言うんじゃありません!!ってなわけで、はい、コレ。」
女は銀時に掴まれた手をブンブンと振り回すが、銀時はものともせず女の手を離さずにいた。そして女の目の前にジャンプを突き付けた。女はその行動に戸惑い、必死に理解しようとそのジャンプを見つめた。
結局答えは見つからず、その行動の意味を銀時は答えた。
「この前お前のせいで俺のジャンプが水浸し。その弁償と慰謝料も兼ねて、このジャンプとそのイチゴ牛乳はお前の奢りっつう事で。」
「な、何言って…」
「それとも何?このまま警察に引き渡してやろうか?」
銀時の追い打ちをかけるかのような言葉に女は返す言葉が無く、不満そうに睨んだ後ジャンプとイチゴ牛乳を銀時の手から勢い良く奪いレジへと向かった。
会計を済ましテクテクと戻って来た女は、袋を握った手を真っ直ぐ伸ばし銀時に差し出した。不覚にもそんな仕草を可愛いと思ってしまった銀時だったが、その袋を受け取った後その女はすぐにその場から走ってコンビニから出て行ってしまった。
「……何だあれ。可愛くねェー。」
結局まともに会話を交わさず、頭をポリポリと掻きながら神楽の酢昆布の会計を済ました後、銀時もコンビニを後にした。
「つか、あれ?アイツらどこ行った?あれ?」
やっと新八達が居ないことに気付いた銀時だったが、この時既に二人は家に帰っていた。つれないヤツらだとボヤきながら、銀時は一人夜道を歩き自宅へと向かった。