第2章 ◇ episode 01
事実無根の罪を着せられ更にヒートアップする銀時。元々女に向かっていた怒りはやがて土方達へと向かい、ズカズカと二人の元へと歩み寄る。
「つーか、お前ら新撰組だろ?町の安全守ってんだろ?もっと仕事しろ税金泥棒!!」
「だぁれが税金泥棒だこの糖尿病野郎!!」
「糖尿病じゃありませんー予備軍ですぅー!」
「威張って言う事じゃねェんだよ!!」
いつもの如く始まったレベルの低い口喧嘩に顔色一つ変えない沖田は、言い合いを続ける二人と、女の方、二つに視線をコロコロ移していた。そしていつまで経っても終わらない言い合いに終止符を打ったのは沖田だった。
「あのー、旦那が泣かした女どっか行きましたけど、追わなくていいんですかィ?」
「………、あんのクソアマァァァ!俺のジャンプぅぅぅぅ!!!」
どうやら言い合いをしていた隙を見て、女は何処かへ行ってしまったらしい。何の事情も知らない沖田はその女を引き止めるはずもなく、走ってその場から消えたと沖田は言った。
「で、何があったんですかィ?痴話喧嘩か何か?」
「んなわけねェだろ!!……もう俺帰るわ。」
未だに女を泣かせたと、勘違いなのか、それとも弄って言っているのか分からないが、それに付き合っている心の余裕など銀時は持ちあわせておらず、無惨に濡れたコンビニの袋を大事そうに手に持ち傘も刺さずに路地裏へと消えていった。
「一体どうしたんですかね?」
「さァな。そろそろ仕事に戻るぞ、人斬りとやらをしょっぴかねェとな。」
沖田は落ち込みながら消えていった銀時を気にしたが、土方は気にする事は無く仕事へ戻る為来た道を戻って行く。沖田も土方の後に続き、やがてその場には誰も居なくなった。
だが、そこから少し離れた物陰には先程銀時に斬りかかった女が居た。
「……蓮、私、全然強くないっ……。」
一人隠れ、膝に顔を埋め泣くその女の声は誰にも届くはずも無く、すすり泣く声は全て雨の音にかき消されていった。