第2章 ◇ episode 01
目の前に居るのは女、されど悪人。戸惑う銀時に気付き、先に動いたのは女の方だった。想像を越える速さに銀時は驚いたが、かつては白夜叉と呼ばれ死闘を繰り広げてきた男。女をギリギリまで引き寄せては刀を握る手を即座に掴み、女の動きを片腕だけで止めた。
女は銀時の身のこなしに目を見開き、銀時も相手から殺気が消えたのが分かったのか掴んでいた手を離した。その途端女は膝から崩れ落ちその場に座り込んだ。
「どんな理由で人斬りなんかやってんのか知らねェけどよ、相手は選んだ方がいいぜ。」
「…………。」
「……じゃ、俺行くわ。帰ってジャンプ読まねぇと…って、あれ?」
ずぶ濡れになる事などお構い無しに座り込んだまま動かない女を残してその場から去ろうとした時、銀時はある異変に気付く。そして銀時の異変に気付いた女もまた虚ろな目で銀時を見た。
「あああああーーーっ!!俺のジャンプがああああーーーっ!!」
女の手を掴んだその反動で手放したであろうコンビニの袋からジャンプがはみ出し、雨に濡れふにゃふにゃになっていた。それを見た銀時は頭を抱えひたすら嘆いている。女は何を言っているのか理解出来ず、ただその光景を眺めていた。
すると銀時は女の方へスタスタと近寄った。
「おいテメェ!俺のジャンプをあんなんにしやがって!もう金無いのによォ!俺の至福の時間を返しやがれ!!」
「……そんなに大事な物なら、手放すな。手放した貴方が悪い。」
「はァ!?人に喧嘩吹っかけて来といてそりゃねェだろ!」
たかがジャンプでここまで怒り狂う銀時を見て、女は馬鹿だとそう思った。反省の色が無い女に銀時の怒りのパロメーターは上がる一方だった。ガミガミと女に怒りをぶちまけている最中、そんな騒ぎを聞きつけてか二人の男の声がした。
「土方さん、旦那が女泣かしてまさァ。」
「あぁ、ありゃ完全に泣かしてるな。」
声の正体は黒い隊服を身に纏った新撰組の土方十四郎と沖田総悟だった。銀時は聞き覚えのある声にあからさまに嫌な顔をしてその声の方を見てみれば案の定、土方と沖田であった。
「土方さんどうします?」
「ありゃ女を泣かせた罪で切腹だな。連行しろ。」
「何でだァァァァ!!マヨラーの癖に何気色悪い事言ってんだ、ボトルの穴にテメェのち◯こ押し込んでやろうか!?」